Bio-Station

Bio-Stationは日々進歩する生命科学に関する知見を、整理、発信する生物系ポータルサイト、を目指します。

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

精子と卵子が出会うとき_1

今回から二回にわけて、精子と卵子が結合するメカニズムについて紹介したい。 私たちの体は37兆個*の細胞からなると考えられていて、 それぞれの細胞が、それぞれの場所で、それぞれの機能を発揮することで恒常性を維持している。 これらのすべての細胞は元…

ヒストンのもつ驚きの機能

DNAを巻き付けているヒストンには銅の還元活性(Cu2+ → Cu1+)があるかも、 という驚きの論文*がでていたので紹介しようと思う。 ヒストンはDNAを巻き付けているタンパク質で、 DNAを核の中にコンパクトに収納するとともに、メチル化などの修飾によって遺伝子…

Ikzf2 (Helios) という因子

Ikzf1(Helios)という聞きなれない遺伝子に関する論文が、 今日のNature*とCell Stem Cell**に報告された。 Natureの方は耳の外有毛細胞の発生に関して、 Cell Stem Cellの方は白血病のがん幹細胞に関してである。 Pubmedで"IKZF1"を検索すると、110件しかヒ…

採用できなかった論文たち_1

比較的最近の論文の中で、このブログで解説しようと思ったが (主に編集者の力不足により)扱いきれなかった論文をまとめて紹介する。 まず、Molecular CellにBack-to-backで出ていた2本の論文。 - Systematic Study of Nucleosome-Displacing Factors in Bud…

レンチウイルスの作成効率を上げる

タイトルそのまま。 レンチウイルスの作成効率を上げる方法を紹介する。 レンチウイルスは目的のプラスミドとウイルスの外殻となるVSVを ウイルス産生用の細胞に導入することで作成される。 ------ 今回の論文では、 このときTaxという遺伝子をコードするプ…

猫も杓子も相分離_2

多くの転写因子はDNA結合ドメイン(DBDs)と活性化ドメイン(ADs)を持つことが知られている。 (下図、一応オレンジ色のまるで囲ってある) これまでDNA結合ドメイン(DBDs)の機能はよく研究されてきたが、 ADの遺伝子発現への機能はあまりよく分かっていない。 **…

同性のマウスから子供を作る_2

前回紹介した通り、同性での生殖を可能にする試みは長い間行われてきた。 今回紹介する論文では、 メス同士から子供を作る効率を上げるとともに、 はじめてオス同士のマウスから子供を作ることに成功した。 ----- メス同士から子供を作るにあたって、筆者ら…

同性のマウスから子供を作る_1

次世代を作るという行為は生物を生物たらしめるために極めて重要である。 多くの生物は性別を持ち、次世代を作る際に遺伝子を混ぜることで、 害となる遺伝子を除くなどの利点を得ている。 一方で、同性での生殖が許されないと、 生殖の機会が減少するため生…

猫も杓子も相分離 (Phase separation)

細胞内には膜を持たない細胞内小器官が存在する。(membrane less organelles) (ストレス顆粒とか、核小体とか) 近年、これらの形成機構として相分離(Phase separation)という概念が提唱されている。流行ですな。 相分離を起こすと、これらの細胞内構造物を構…

父親からのエピジェネティクス継承はほとんどない?

個体の多くの形質は、遺伝的なDNA情報によって説明されると考えられてきた。 しかし、生命科学研究の進歩によって、ヒストン修飾やDNA修飾など、 DNAの塩基配列変化を伴わない形質伝播が存在することが分かってきた。 (いわゆるエピジェネティックスというや…

新しいロドプシン

近年、光遺伝学(オプトジェネティクス)というものが開発され、神経科学を中心に強力な研究ツールになっている。 光遺伝学は、光に応答するイオンチャネルを神経細胞に発現させておくことで、 光をON/OFFすることで、好きな場所の神経を、好きな時に活動させ…

学習/記憶に重要なRNA修飾

mRNAは転写されたのちに様々な修飾を受けることが知られている。 例えば、5末端でのキャッピングや、3末端のテーリングはRNAの成熟に必須である。 近年でもシトシン5位のメチル化(5mC)や、擬ウリジン化などいくつかの新しいRNA修飾が報告されている。 さらに…