Bio-Station

Bio-Stationは日々進歩する生命科学に関する知見を、整理、発信する生物系ポータルサイト、を目指します。

エピジェネティクス

相分離を駆動する"ヌクレオソームコア"の構造変化

私たちのゲノム情報をのせたDNAは、細胞核の中でヒストンやその他の非ヒストン性タンパク質群と共にクロマチンを構成する。 クロマチンは一般に緩い構造を取ると遺伝子発現が活性化しやすく、凝集した構造を取ると遺伝子発現が抑制されやすい。 このようにク…

タンパク質ノックダウンで見えてきた新しい転写制御機構

遺伝子の発現がいかに制御されるか、という疑問は生物学において最も根源的な問題の一つである。 多くの遺伝子はRNAポリメラーゼII(以下PolII)によって転写されるため、PolIIの制御機構を知ることが遺伝子発現制御メカニズムを知るうえで大きなカギとなる。 …

幹細胞のグランドキャニオン?

DNAは折りたたまれて細胞核の中に収納されている。 DNAの折りたたまれ方にはいくつか種類があって、近いDNA同士がループ構造を作ったり、エンハンサー同士がぎゅっと集まったりする様式が知られている。 この折りたたまれ方の違いは遺伝子発現を制御するする…

転写因子のヒストン自体への結合が細胞運命に重要?

私たちの体は多様な細胞種によって構成され、それぞれの細胞に正しく分化するにはそれぞれの細胞群に必要な遺伝子セットが活性化される必要がある。 細胞分化に伴って特定の遺伝子セットを活性化するには、それまでクロマチンが閉じていた領域をオープンにし…

細胞老化に伴う細胞核状態の変化

今回は細胞の老化とクロマチン状態の関係について迫った論文を紹介 細胞は無限に増殖し続けられるわけではなく、ある状況下において細胞増殖を停止させることが知られている。 この細胞増殖の停止は細胞老化と呼ばれ、SA-β-galの蓄積、細胞周期抑制因子p16や…

ヒストン修飾と相互作用する新規タンパク質の網羅的同定

正確な細胞運命の制御には、正確な遺伝子発現の制御が重要である。 厳密な遺伝子発現の制御のために、DNAを巻き付けるヒストンのメチル化やアセチル化といった化学修飾が大きな役割を果たすことが知られている。 これまでにヒストンの化学修飾(メチル化/アセ…

脊椎動物の「休眠状態」の分子メカニズム

いくつかの生物は過酷な環境を生き抜くために特殊な能力を身につけてきた。 例えばリスやクマは冬を越すために冬眠するし、マウスも絶食,寒冷,恒暗などの状況下では低体温,活動量の低下を伴う非活動状態(torpor)になる(1)。 このような特殊能力の一つとし…

tRNA断片が核の構造を変える!?

RNAといえば、多くの方は翻訳されてタンパク質を生み出すメッセンジャーRNA(mRNA)を思いつくかもしれない。 しかし、細胞内に含まれるRNAのうちmRNAが占める割合はほんの数パーセントであり、大部分のRNAはタンパク質をコードしないノンコーディングRNAであ…

代謝とエピジェネをつなぐ新しいヒストン修飾「ラクチル化」の発見!

遺伝子の発現がどのように制御されているか知ることは、現在の生命科学の一つのゴールである。 遺伝子発現には遺伝子自身のDNAは配列も重要だが、DNAをパッキングするヒストンの状態も重要であることが知られている。 古典的にはヒストンのアセチル化が活性…

核の中の相分離

細胞の中で、DNAから適切な遺伝子が発現し機能することは、細胞運命を正確に制御するために極めて重要である。 これまでに遺伝子発現の制御には、多数のヒストン修飾をはじめとしたエピジェネティック因子が重要であることが示されてきた。 例えば下のイラス…

記憶が遺伝する!?

生物学では、長い間、後天的に獲得した形質は次の世代には遺伝しないと考えられてきた。 ところが近年、この通説を覆すような事例が報告されつつある。 最も有名な例が、第二次世界大戦中のオランダ飢饉の例である。 第二次世界大戦中にナチスドイツの出入港…

細胞核構造のダイナミックな変化が学習に大事!

神経細胞は、神経活動に合わせて遺伝子発現を変化させる必要がある、という点で少し特殊な細胞である。 この神経活動依存的な遺伝子発現の制御は学習や記憶といった高次機能にとても重要なので、これまで多くの研究者たちの興味を引いてきた。 これまで研究…

ATAC-seqの歴史

遺伝子の発現がどのように制御されているか知ることは、生物学の根幹である。 これまでの古典的な研究で、遺伝子の発現はプロモーターやエンハンサーの活性で制御されることが分かってきた。 さらに最近、このプロモーターやエンハンサーのクロマチン(DNAと…

ヒストンの持つ驚きの機能_2

ヒストンの持つ驚きの機能_2 ヒストンは細胞核の中でDNAを巻き付けてパッキングするタンパク質として知られる(以下の図)。 また、ヒストンはメチル化などの修飾を受けることで、遺伝子の発現を制御する大事な役割があることが分かっている。 このためヒスト…

ChIA-PETの歴史

今回はタイトル通りChIA-PETという手法の解説。 私たちのゲノムには"エンハンサー"という大事な領域がある。 "エンハンサー"はその名の通り、遺伝子発現をエンハンスする領域である。 面白いことに、このエンハンサーは - 転写を活性化する遺伝子の転写開始…

エピジェネ因子の"じゃない方"の機能_DNAメチル化編

エピジェネティクスとは「DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステム(脳科学辞典)」として知られる。 よく知られたエピジェネ修飾は、DNAを巻き付けているヒストンのメチル化やアセチル化などの修飾だろう。このほかにもDNAのメチル化、RNA…

ニューロンの多様性を作るメカニズム

私たちは常に外界からの情報を受け取り、処理し、行動に結びつけている。 ご存知のように、これらの情報処理を行うのに重要な器官は"脳"である。 脳の中でも神経細胞、ニューロンがとても重要であることが知られている。 人間には非常に多くのニューロンが存…

「1細胞1受容体ルール」の分子メカニズム_2

前回の記事で紹介したように、 嗅覚神経には「1細胞1受容体ルール」という面白い特徴がある。 これまで、「1細胞1受容体ルール」を可能にするメカニズムを探索する中で - OR遺伝子(嗅覚受容体遺伝子)は数多くのエンハンサーによって制御されること - OR遺伝…

「1細胞1受容体ルール」の分子メカニズム_1

動物はほぼ無限に存在する匂い物質をどのようにかぎ分けているだろうか? 匂いを感知するのは嗅覚系の嗅覚受容体であるが、マウスでも嗅覚受容体の遺伝子数は1000個程度であり、 1受容体が1つの物質を感知する仕組みだとそれほど多くの物質をかぎ分けること…

ニューロンを生むべきか、グリアを生むべきか

私たちの脳はニューロンやグリア細胞といった細胞から構成される。 このニューロンやグリア細胞は発生期において 共通の起源である神経幹細胞から生み出されることが知られている。 神経幹細胞は興味深い性質を持っていて、 発生の初めの方にはニューロンだ…

シングルセルChIP-seq

今回は日本初のテクニックについて紹介しようと思う。 ChIP(クロマチン免疫沈降法)は、 あるタンパク質がゲノム上のどこに張り付いているか調べる方法で、 転写因子の解析やエピジェネティクスの研究でよく使用されている。 具体的な実験としては、以下の図…

端のメチルが役に立つ?

今回は日本人研究者の論文を紹介しようと思います*。 タイトルは完全にプレスリリースのタイトルに引っ張られてます... (プレスリリースのタイトルは"メチルは端だが役に立つ") 少し前の投稿でも解説した通り、 最近新しいRNA修飾としてm6Aが再発見され、そ…

ヒストンのもつ驚きの機能

DNAを巻き付けているヒストンには銅の還元活性(Cu2+ → Cu1+)があるかも、 という驚きの論文*がでていたので紹介しようと思う。 ヒストンはDNAを巻き付けているタンパク質で、 DNAを核の中にコンパクトに収納するとともに、メチル化などの修飾によって遺伝子…

父親からのエピジェネティクス継承はほとんどない?

個体の多くの形質は、遺伝的なDNA情報によって説明されると考えられてきた。 しかし、生命科学研究の進歩によって、ヒストン修飾やDNA修飾など、 DNAの塩基配列変化を伴わない形質伝播が存在することが分かってきた。 (いわゆるエピジェネティックスというや…

学習/記憶に重要なRNA修飾

mRNAは転写されたのちに様々な修飾を受けることが知られている。 例えば、5末端でのキャッピングや、3末端のテーリングはRNAの成熟に必須である。 近年でもシトシン5位のメチル化(5mC)や、擬ウリジン化などいくつかの新しいRNA修飾が報告されている。 さらに…