Bio-stationは、最新の生命科学情報を広くお伝えすることを目指しています。 現在は管理人が選んだ論文を紹介しています。ただし、現状の問題として、管理人の理解できる論文に限られてしまう、管理人が実験したわけではないので論文以上のことは分からない…
今回はタイトル通りChIA-PETという手法の解説。 私たちのゲノムには"エンハンサー"という大事な領域がある。 "エンハンサー"はその名の通り、遺伝子発現をエンハンスする領域である。 面白いことに、このエンハンサーは - 転写を活性化する遺伝子の転写開始…
たまに論文の探し方を聞かれるので、まとめておきます。生命科学系の新しい論文を探す方法です。(*本当は自分用のメモです) 自分は英語が読むのがつらいので、できるだけ日本語で情報が得られるようにしています。一応ラボに配属された学部生~大学院生向けで…
iPS細胞は多くの細胞に分化できる能力を持つすごい細胞である。 ご存知のように、iPS細胞を作成する方法は山中先生らによって報告された(Takahashi & Yamanaka, 2006)。 この方法では、山中4因子といわれる転写因子(Oct3/4, Sox2. Klf4, c-Myc)を細胞に過剰…
麻酔薬は、生存状態を保ちながら知覚と随意運動能力を抑制する。 まさに魔法のような薬であり、外科手術には必須のものである。 人類史上、初めての全身麻酔による外科手術は1804年、日本人の医家、華岡青洲によって実現された。(以下肖像) 華岡青洲は朝鮮朝…
哺乳類の寿命は種によって200倍も異なっていることが知られている。 同じ地球に生きるものなのに、どうして寿命がこれほどまでに異なるのだろうか? とても魅力的な疑問であるにもかかわらず、種間で寿命の差を生み出す分子メカニズムはほとんど分かっていな…
エピジェネティクスとは「DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステム(脳科学辞典)」として知られる。 よく知られたエピジェネ修飾は、DNAを巻き付けているヒストンのメチル化やアセチル化などの修飾だろう。このほかにもDNAのメチル化、RNA…
私たちは常に外界からの情報を受け取り、処理し、行動に結びつけている。 ご存知のように、これらの情報処理を行うのに重要な器官は"脳"である。 脳の中でも神経細胞、ニューロンがとても重要であることが知られている。 人間には非常に多くのニューロンが存…
前回の記事で、ある遺伝子をノックアウトした時にその遺伝子に似た機能を持つ遺伝子の発現が上昇する"コンペンセーション"のメカニズムについてまとめた。 まとめると前回紹介したところまでで、 ノックアウトで似た遺伝子の発現が上がるのは ノックアウトに…
生物はある遺伝子が欠失した時でも、同じような機能を持つ遺伝子を発現させるメカニズム(Genetic compensation、以下"コンペンセーション")を持っている。 よくあるのは、ある遺伝子をノックアウトした際に、ファミリー遺伝子の発現が増加するもの。 (例えば…
私たち人間は、多くの情報を視覚から得ている。 人間が感知することのできる光は 波長がおよそ400nm~700nmの間にある可視光のみである。 一方で、世界には可視光以外の波長の光にもあふれており、 もし「可視光」(波長400nm~700nm)以外の光を「みる」こと…
今回は論文紹介ではなくて、 最近見つけた生命科学サイトを紹介したい。 それがこちら。 https://www.ibiology.org/ "iBiology"というサイト。 結構有名らしいが自分は最近知った。 ----- "無償で最先端の生命科学研究を世界中に広めること"を目標としたサイ…
生物学には"スーパーエンハンサー"という用語がある。 歴史はそれほど長くはない。 初めに"スーパーエンハンサー"と言い出したのはRichard Youngという大物である。 2013年に彼がのグループがCellにBack-to-backで出した2報の論文が "スーパーエンハンサー"…
拙ブログでも何度か紹介しているように、 次世代シーケンサーの登場によって、多くの細胞種でRNAseqが行われ、 それらの細胞の遺伝子発現が網羅的に調べられてきている。 その勢いや猪のごとく(猪年だけに?)、 三大紙でもRNAseqを見ない週はない勢いである。…
前回の記事で紹介したように、 嗅覚神経には「1細胞1受容体ルール」という面白い特徴がある。 これまで、「1細胞1受容体ルール」を可能にするメカニズムを探索する中で - OR遺伝子(嗅覚受容体遺伝子)は数多くのエンハンサーによって制御されること - OR遺伝…
動物はほぼ無限に存在する匂い物質をどのようにかぎ分けているだろうか? 匂いを感知するのは嗅覚系の嗅覚受容体であるが、マウスでも嗅覚受容体の遺伝子数は1000個程度であり、 1受容体が1つの物質を感知する仕組みだとそれほど多くの物質をかぎ分けること…
近年、シングルセルRNAseq解析が生命科学研究で広まっている。 シングルセル解析の大まかな使われ方としては - 新しい細胞集団を見つけ出す - 発生/分化過程における遺伝子発現変動をつかむ の2種類があげられる(と思っている)。 後者では、ある細胞からある…
先日もエンハンサーについて紹介したが、 https://jugem.hatenadiary.jp/entry/2019/01/30/212419 今回も違った角度からエンハンサーについて扱った論文を紹介する。 ----- 今の生命科学研究では、ある細胞のみを標識すること、が結構重要である。 例えば、…
多くの生き物のゲノムには、 ウイルスを由来とする配列が多く含まれていることが分かっている。 例えばその一つで、レトロウイルス由来の配列であるRetroelementsは ヒトゲノムの40%を占めるとされている。 このようなウイルス由来配列は、胎盤形成に関わる…
私たちの体がきちんとできあがるためには、 皮膚の細胞は皮膚の細胞へ、脳の細胞は脳の細胞へと それぞれの細胞がそれぞれのなるべき細胞に分化する必要がある。 この細胞の運命がきちんと制御されることが、正しい発生に極めて重要である。 細胞の運命は転…
それなりの種類の爬虫類は、卵の時の温度に合わせて性別を決定するという仕組みを持っている。 例えばアカミミガメでは26℃ではほとんどオスになるが、 32℃ではほとんどがメスになることが知られている。 温度で性別をさせる利点ははっきりとは分かっていない…
多くの生物学研究は、マウスやハエ、線虫やゼブラフィッシュなどの モデル生物を用いて行われている。 モデル生物はこれまで数多くの知見が蓄積しているので、 研究を進めるには非常に便利である。 その一方で、地球上にはモデル生物以外の種も数多く存在し…
昨年は本庶佑先生がノーベル賞を受賞されて盛り上がりましたが、 おととしのノーベル医学生理学賞は何だったか憶えているでしょうか。 おととしのノーベル医学生理学賞は "概日リズムをコントロールする分子メカニズム"の発見に対して、 ジェフリー・ホール…
生き物のゲノムにはlong non-coding RNA(lncRNA) (タンパク質をコードしていない長いRNA) が数多く存在していることが分かっている。 これまで数多くの因子のlncRNAの機能が報告されてきたが、 意外と発生に不可欠であるという報告は少なく、 lncRNAが"死ぬ…
今年もインフルエンザが広まる季節になってきましたね。 当ラボでもボスを始めとして発症者が出てしまいました.... ただ、去年までと様相が異なるのは、 "ゾフルーザ"という新しい薬が出ていることだろう この"ゾフルーザ"の作用機序は結構興味深いので、 こ…
最近の神経科学のトレンドの一つとして、 "軸索でのローカルなもろもろの制御"というのが挙げられる。 例えばこれまで、mRNAはaxonでローカルに必要な場所で合成されるだとか、 m6a修飾がaxonで特異的におこるとかが報告されてきた。 さらに、最近オルガネラ…
私たちの脳はニューロンやグリア細胞といった細胞から構成される。 このニューロンやグリア細胞は発生期において 共通の起源である神経幹細胞から生み出されることが知られている。 神経幹細胞は興味深い性質を持っていて、 発生の初めの方にはニューロンだ…
2018年も最後になってきたので、 今年出た論文で紹介しきれなかったものを簡単に紹介する。 Self-organization of a human organizer by combined Wnt and Nodal signalling, Nature, 2018 1924年にシュペーマンとマンゴールドの実験によって、イモリの初期…
今年2018年は大谷翔平がメジャーリーグでも二刀流をこなし話題になりましたね。 年の瀬ですが、Scienceにタンパク質も二刀流していたというやつが出ていたので 紹介します。 この論文では、心筋で筋小胞体とT tubeをつなぐ構造タンパク質として知られていたJ…
今回は日本初のテクニックについて紹介しようと思う。 ChIP(クロマチン免疫沈降法)は、 あるタンパク質がゲノム上のどこに張り付いているか調べる方法で、 転写因子の解析やエピジェネティクスの研究でよく使用されている。 具体的な実験としては、以下の図…