Bio-Station

Bio-Stationは日々進歩する生命科学に関する知見を、整理、発信する生物系ポータルサイト、を目指します。

膜電位が運命をきめる!

膜電位が運命をきめる!
 
Progenitor Hyperpolarization Regulates the Sequential Generation of Neuronal Subtypes in the Developing Neocortex, Cell, 2018
Ilaria Vitali, Sabine Fie` vre, Ludovic Telley, ..., Camilla Bellone, Debra L. Silver, Denis Jabaudon
 
一般的に、細胞は細胞の内側と外側でイオン濃度が異なり、細胞内は-の電位になっている。
心臓の細胞やニューロンは活動する際に、この電位を変えることが知られている。
 
が、今回の論文で筆者らは、この膜電位が幹細胞の運命にも影響を与える、ことを示した。
 
-----
 
まず彼らは神経幹細胞では発生に伴って膜電位が下がっていることを明らかにする。
 
一般的には一定だと思われる膜電位が、発生段階に伴って変わるのは非常に驚きである。
 
この膜電位の変化には意味があるのだろうか??
 
彼らは、イオンチャネルの過剰発現や、近年開発された手法であるDREADD*で膜電位を人為的に操作した。
 
その結果、なんと膜電位を強制的に上げた場合には幹細胞が発生時期的に若返り、下げた場合には逆のことが起きることが分かった。
 
すなわち、膜電位の変化がその発生時期らしい幹細胞のアイデンティティを保つのに必要であった!!
 
*Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drug
人工化合物(多くはCNO)依存的に活性化させることのできるデザイナー受容体
 
-----
 
つぶやき
 
膜電位が幹細胞の運命制御に重要であるという概念は新しく、インパクトを感じる。
 
これからは、何が膜電位を変化させるのか、どのように膜電位が運命を変化させるのか、といった点が解明されていくだろう。
 
Last authorのDenis Jabaudonさんは、この前セミナーを聴いた。
 
全然違う話だったが、そちらの内容もバイオアーカイブにpreprintがでていた。なかなか多産なラボである...