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タコの神経基盤

タコは、5億年も前にヒトとは進化的に分離した種であるが、
 
無脊椎動物としては最も神経が発達していることや、
 
特徴的な足の吸盤、ぎょろっとした目、などからモデル動物として有用らしい。
 
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今回筆者らは、特にその行動の多様性に着目し、
 
タコの神経活動は、ヒトなどと同様な基盤を持つか検討した*。
 
仮説drivedな研究で、読んであるゲノムの中から、
 
ヒトのセロトニン受容体に似ている遺伝子を探し、実際にタコゲノムにもセロトニン受容体らしいものがあることを発見している。
 
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あとはこのセロトニン受容体が、MDMA(麻薬)にも反応して、タコもMDMAの社会性があがることを示している。
 
少し面白いのは、これまでタコで社会性を評価する実験系が存在しなかったため、
 
彼ら自身で、マウスで社会性を評価する実験系をタコに応用している点だ。
 
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それも、タコ版3 chamber test !
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この系では、3つの部屋を用意して、
本物のタコを真ん中に、左右におもちゃか本物のタコを固定しておく。
 
社会的であれば、真ん中のタコは本物のタコがいる部屋に滞在する時間が長くなるし、社会的でなければその逆だ。
 
今回の例では、MDMAを投与したタコでは、本物のタコの方によりつきやすくなるという結果が得られた。
 
この3 chamber testはマウスでは頻繁に行われてはいるが、タコでも同じ実験ができるのはなかなか面白い。
 
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いずれにせよ、タコとマウスは同じような神経基盤を持っていることが分かった。
 
ヒトは複雑な脳を持っていてうんたらかんたら、というのは思い上がりに過ぎないということだろう。
 
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ちなみに本文の1行目がなかなかかっこよかった。
 
Recently, we completed whole-genome sequencing and assembly in Octopus bimaculoides. (Nature, 2015)
「私たちは最近、タコの全ゲノムを解読した。」
 
普通の論文は、何々はとても大事で、これまでの研究はうんたら、と始めるが、
 
この論文のような感じでズバッとはじめるのは新鮮でかっこよかった。
 
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*A Conserved Role for Serotonergic Neurotransmission in Mediating Social Behavior in Octopus, Current Biology, 2018