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ポリAテールはAだけじゃない!

DNAから転写された一般的なRNAは、キャッピングやスプライシングといった
 
様々な加工を受けたのちに成熟RNAとなり核外に輸送される。
 
特に、RNAの3末端側にAが付加されるポリAテーリングという修飾は、RNAの翻訳効率や安定性に関わるためとても重要である。
 
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これまで、ポリAテールはすべてAからなり、他の塩基は存在しないと考えられていた。
 
ところが、筆者らは、RNAの3末端の配列を読む新手法を確立し、ポリAテールにはなんとAだけではなく、GやUも含まれることを明らかにしてきた*。
 
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では、何がポリAテールのGなどの修飾を行っているのだろうか。
 
筆者らは、いくつかの末端塩基修飾酵素群(terminal nucleotidyltransferase, TENTs)を網羅的にノックダウンすることで、TENT4A/BがポリAテールにGを入れることを明らかにした**。
 
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では、このような特殊なRNA修飾はRNA動態にどのような影響を与えるのだろうか?
 
この疑問に答えるために、TENT4A/Bを欠損した状態で、RNAの分解速度を調べると、RNAの分解が早くなっていることが分かった。
 
すなわち、TENT4A/BはポリAテールにGを入れることで、RNAの安定性を高めていることが分かった。
 
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近年、幹細胞の時点で既に分化細胞で必要なRNAをすでに発現していて、
RNAの分解や翻訳の制御によって分化運命が決まっていることが分かってきつつある。
 
今回明らかになったようなRNAの制御も細胞の運命に影響するのだろうか?
 
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* TAIL-seq: Genome-wide Determination of Poly(A) Tail Length and 3′ End Modifications, Molecular Cell, 2014
** Mixed tailing by TENT4A and TENT4B shields mRNA from rapid deadenylation, Science, 2018