Bio-Station

Bio-Stationは日々進歩する生命科学に関する知見を、整理、発信する生物系ポータルサイト、を目指します。

学習/記憶に重要なRNA修飾

 
mRNAは転写されたのちに様々な修飾を受けることが知られている。
 
例えば、5末端でのキャッピングや、3末端のテーリングはRNAの成熟に必須である。
 
近年でもシトシン5位のメチル化(5mC)や、擬ウリジン化などいくつかの新しいRNA修飾が報告されている。
 
さらに2015年、新たなRNA修飾として、アデニン6位のメチル化(m6A)が同定された。
 
------
 
この発表後、m6Aの機能について初期発生や神経発生で次々と報告されてきた。
(ことごとくtop journalに...)
 
しかしながら、成体でのm6Aの機能はほとんど分かっていなかった。
 
今回、驚くべきことに筆者らはm6A修飾が学習や記憶に重要であることを明らかにした。
 
-----
 
筆者らは、m6Aを認識するタンパク質であるYthdf1をKOしたマウスを解析した。
 
すると、Ythdf1ノックアウトマウスでは空間学習/記憶が落ちていることが明らかになった。
 
さらにYthdf1ノックアウトマウスに対して、Ythdf1を海馬にウイルスで発現させると学習能が回復することも示している。
 
また、野生型マウスで海馬特異的にm6A導入酵素であるMettl3を
ノックダウンすると、Ythdf1 KOと同様の表現型が得られた。
 
すなわち、これらの学習能力の落ちはm6Aが原因であることがさらに示唆された
 
-----
 
さらに、このメカニズムとして、m6Aが神経活動に重要な遺伝子群に結合していること、
 
m6A修飾の有無で翻訳効率が変化することなどを示している。
 
-----
 
5mCも相当な勢いで研究が進んでいるが、m6Aも同じような勢いを感じる。
 
たいていの論文がm6Aと表現型をつなぐメカニズムとして翻訳効率を挙げているが、
 
どれだけが翻訳効率で説明できているのかは気になってしまうが。
 
-----
参考
* m6A facilitates hippocampus-dependent learning and memory through YTHDF1, Nature, 2018