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同性のマウスから子供を作る_1

次世代を作るという行為は生物を生物たらしめるために極めて重要である。
 
多くの生物は性別を持ち、次世代を作る際に遺伝子を混ぜることで、
害となる遺伝子を除くなどの利点を得ている。
 
一方で、同性での生殖が許されないと、
生殖の機会が減少するため生物学的には不利である。
 
では、
同性での生殖を阻む生物学的バリアは何であろうか?
同性での生殖は可能であるだろうか?
という疑問は、これまで数多くの研究者の興味を集めてきた。
 
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同性からマウスから生殖を初めて可能にしたのは日本人のグループで、2004年に報告された*。
 
筆者らは、H19-Igf2 遺伝子座をなくした卵子卵子を融合させることで、
メスマウス同士から子供を作成することに成功した。
(このマウスはかぐやマウスと名づけられている)
 
H19-Igf2というのはインプリント遺伝子といわれ、
母方鎖からのみ発現する遺伝子であることが知られている。
 
つまり、普通に卵子に発現しているH19-Igf2が残っていると、
受精後のイベントに不都合が起きることが分かった。
 
また、彼らは後の論文**で、他のインプリント遺伝子座を欠損させると
メスマウス同士からのマウス作成効率が上昇することも示している。
 
すなわち、インプリント遺伝子が同性の生殖を阻むバリアとなっていることが示唆されてきた。
 
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しかしながら、他のインプリント遺伝子の寄与はどの程度あるのか?
 
オスマウスのみからマウスを作成できるのか?
ということは明らかではなかった。
 
次回はこの問題に取り組んだ最近の論文を紹介する。
 
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参考
* Birth of parthenogenetic mice that can develop to adulthood, Nature, 2004
** High-frequency generation of viable mice from engineered bi-maternal embryos, Nature Biotech., 2007