同性のマウスから子供を作る_2
前回紹介した通り、同性での生殖を可能にする試みは長い間行われてきた。
今回紹介する論文では、
メス同士から子供を作る効率を上げるとともに、
はじめてオス同士のマウスから子供を作ることに成功した。
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メス同士から子供を作るにあたって、筆者らが目指した方向性は、
具体的な方法は以下の図を参考にしてほしい。
順番に説明すると、初めに
次に、
(2) 特殊な培地で培養することで、DNAメチル化を全体に下げて、父方鎖だけで発現すべき遺伝子の発現をONにする。
ついで、
(3) ~3つの母方鎖だけで発現する遺伝子(orそのインプリント制御遺伝子座)をCRISPR-cas9システムによって欠損させる
最後に
ことでメス同士からの子供を作ることができる
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これまでとの違いは、(2)で父方鎖だけで発現すべき遺伝子の発現をONにしたこと、
(3)で3つもの遺伝子をノックアウトしたことである。
実際この手法によって、より効率よく、メス同士からの子供を作ることに成功している。
このことから、やはりインプリント遺伝子の重要性が示唆される。
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オス同士から子供を作るのはこの全く逆で、
(2) 特殊な培地で培養することで、DNAメチル化を全体に下げて、母方鎖だけで発現すべき遺伝子の発現をONにする。
(3) ~7つの父方鎖だけで発現する遺伝子(orそのインプリント制御遺伝子座)をCRISPR-cas9システムによって欠損させる
(5) 代理母に出産させる
というもの。
7つもの遺伝子をノックアウトするというのがミソで、
1つの遺伝子のノックアウトでも時間がかかっていた時代から
CRISPRが出現することで、7つもの遺伝子をノックアウトすることが可能になった。
今回の手法を用いることで筆者らは、世界に先駆けて、オスマウスのみから子供を作ることに成功した。
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同性のマウスから子供を作るということのインパクトも大きいが、
改めてインプリント遺伝子の重要性を認識させられる論文だった。
では、インプリント遺伝子はどのような仕組みで正常な発生に貢献しているのだろうか?
インプリント鎖から発現/翻訳されるタンパク質の量が大事なのだろうか?
インプリント遺伝子座から発現するRNA(Non-coding??)が大事なのだろうか?
はたまた、インプリント遺伝子座、それ自身がgenomic structureの形成に重要なのだろうか?
今後の研究が少しづつこれらの疑問を解き明かしてくれるだろうが、
発生はまだまだ大きな謎が残った奥深い分野だと感じた。
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参考
Generation of Bimaternal and Bipaternal Mice from Hypomethylated Haploid ESCs with Imprinting Region Deletions, Cell Stem Cell, 2018
Mice from Same-Sex Parents: CRISPRing Out the Barriers for Unisexual Reproduction, Cell Stem Cell (Preview), 2018