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CRISPRの歴史_2

前回、CRISPRの歴史について紹介したが、
Cellに昔出ていた"The Heroes of CRISPR"(Cell, 2015)という総説がかなり良かった。
どういった人々が、どのような経緯で重要な発見に至ったかが記されている。
 
*オープンアクセスなので誰でも読める。ぜひ。
ちなみに書いたのはボストンの人なので、フェンチャンびいきになっている。
 
同然ダウドナはこれには承服できない部分があるらしく、
Pubmedで反論が投稿されている。
これら議論は他の科学雑誌でも取り上げられ、
それはそれで読みごたえがあって面白い。
 
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それはまあいいとして、ゲノム編集技術としてのCRISPRの発見以降で、
重要そうなものを紹介したい。
 
まず、dCas9
dCas9とは、DNA切断活性を失わせたCas9
このCas9に転写促進因子(よく使われるのはVP16)や阻害因子をくっつけることで、
任意の遺伝子座の発現を調節することができる。
 
2013年のCellにダウドナが出している(1)。早すぎ。
というか最初のScience通ったときにはもうできてたんだろう。
最近はdCasにヒストン修飾因子くっつけるのも出ている。
例えばヒストンアセチル化酵素くっつければ、その遺伝子座のアセチル化があがる。
 
 
次に、cas9の構造
Cas9を改造していくためには、タンパク質の構造情報も不可欠。
というわけで、我先にとCas9の構造をとろうとした。
 
これも先着はダウドナ(2)。
ただダウドナグループはCas9単体の構造解析で、
ガイドRNA、標的DNAを含んだ構造体の構造は、
フェンチャンと組んだ濡木研が報告している。
 
ちなみに濡木研はこの後も別種のCas9や、
似たような因子のCpf1の構造でハイインパクトジャーナル出しまくっている
濡木研の論文は"新着論文レビュー"にまとめられているのも多いのでこれもおすすめ。
Acceptに至るまでの競合の内幕なども語られていて面白い。
 
今回はこのくらいで、もう一回分くらいまとめようと思う。
 
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参考
(1) Repurposing CRISPR as an RNA-Guided Platform for Sequence-Specific Control of Gene Expression, Cell, 2013
(2) Structures of Cas9 Endonucleases Reveal RNA-Mediated Conformational Activation, Science, 2014
(3) Crystal structure of Cas9 in complex with guide RNA and target DNA, Cell, 2014