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精子のpHセンサー

精子卵子の近くに来ると、ハイパーアクティベーションを起こして卵子に突っ込む。
 
このハイパーアクティベーションには精子へのカルシウムイオンの急速な流入が必要であることが知れている。
 
これまで、このカルシウムイオンの流入を可能にするカルシウムチャネルとしてCatSperというのが知られていた(Nature, 2011)。
 
このハイパーアクティベーションは、ホルモン精子の周りのpH変化、の二つによって活性が制御されるとされている。
 
これまで、CatSperがホルモンに応答する分子メカニズムは分かっていが、pHをどのように感知しているのかは不明であった
 
今回このpHセンサーを同定したという論文を紹介。
 
 
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pHセンサーたりうる因子は何か?
 
筆者らはCatSperに結合するタンパク質が大事だろうと考え、CatSper結合タンパク質をIP-MSで解析。
 
→その結果、既知のCatSper構成因子と共に、EFCAB9という因子を同定!
 
 
次に、EFCAB9がpHセンサーか?を検証
 
→野生型ではpHを変えるとカルシウム濃度変化するが、EFCAB9をノックアウトするとこれがおこらない。
→EFCAB9がpHセンサーかも。
(*なぜEFCAB9がpHセンサーかもしれないと目を付けたのかは謎。)
 
 
生理的に意味があるか?
 
EFCAB9のノックアウト精子を観察
 
→ハイパーアクティベーションが起きず、受精がうまくいかない。
→EFCAB9は生理的にも大事!
 
 
一応下にグラフィカルアブストラクトを掲載。
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長年不明であったpHセンサーを取れたのは大きい発見なのではないか?
 
ただ、どのようにpHを感知しているのかはイマイチ分からなかった。こういう時こそ構造とか見てみたくなる。
 
他の酸センサーにも共通なメカニズムがあると面白いと思った。
 
(あまり気の利いたコメントができない...)
 
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参考
Dual Sensing of Physiologic pH and Calcium by EFCAB9 Regulates Sperm Motility, Cell, 2019