ibiologyまとめ#1 David Sabatini_栄養センサーmTORの発見
今回は新コーナーということで、iBiology(分野の大御所が自身の研究について紹介してくれるサイト)のまとめ。
初回はDavid Sabatini。写真のような方。作曲家か指揮者みたいですね。
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David Sabatiniは栄養センサーとして知られるmTORの同定で非常に有名である。
mTORは超有名分子なのでおなじみの方も多いだろう。ではこのmTORはどのように発見されたのだろうか?
mTORはTarget of Rapamycin(ラパマイシンターゲット)の略。というわけで、まずはラパマイシンについて紹介。
ラパマイシンは上の構造をしている化合物で、太平洋に浮かぶラパヌイ島(イースター島、モアイがある島)で単離された。
興味深いことに、ラパマイシンは寿命を延ばす効果があることなども知られている。
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Sabatiniがラパマイシンの研究を始めたのは、彼がジョンズポプキンス大学で大学院生の時だった。
当時彼が所属していたラボでは、いろんな種類の低分子を集めて、その生理活性を調べていたらしい。
その中で、Sabatiniがラボに入るころは、タクロリムス(FK506)の作用機序を調べてた。
この結果、タクロリムスはFKBPというタンパク質に結合してカルシニューリンを活性化することが分かった。(Liu et al, Cell, 1991)
このとき、部分構造が一致するがカルシニューリンは活性化しない"コントロール"として取られていたのがラパマイシンだった。
(左がタクロリムスで、右がラパマイシン)
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このとき、タクロリムスとラパマイシンが同じタンパク質(FKBP;たぶんFK506 Binding Protein)に結合することまでは分かっていた。
では、ラパマイシンはFKBPと結合したのちに、どのようなタンパク質をターゲットするのだろうか?
この標的に迫るため、Sabatiniはラパマイシンが結合したFKBPを放射線ラベルし、結合するタンパク質をMSで解析した。
その結果、ラパマイシンが結合した時にだけFKBPと結合する因子として、それまで未知だったタンパク質を同定しTOR(Target of Rapamycin)と名付けた。
比較的大きな分子で当時クローニングは簡単ではなかったらしいが、配列も決めている。
これが世にいう?mTORの同定である(Sabatini et al., Cell, 1994)。
ちなみに、ほぼ同時期に、ラパマイシンが効かなくなる変異体スクリーニングからもmTORとられた。
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この後、数多くの研究によって、mTORは細胞の栄養状態によって活性状態を変化させることが分かった。すなわち、mTORは"栄養センサー"である。
では、mTORはどのように栄養状態を感知するのだろうか?
まずSabatiniは、細胞を飢餓状態にしたあとにアミノ酸を加えると、mTORが粒状になりリソソームに局在することを見出す。
(ちなみにこの実験はSabatiniが御父上から提案されたらしい)
さらに、リソソーム上でmTORと結合する因子を次々と同定していった。(Lim et al., JCB, 2016より引用)
これらの多数の因子を複雑な制御を受けて、mTORの活性は制御されていることが分かっている。
では、まさに栄養をダイレクトに感知している分子は何だろうか?
Sabatiniは特にアミノ酸を感知する分子をよく研究している。
これらの結果、上の図にもあるようにSLC38A9とCASTORがアルギニンセンサー、Sestrinがロイシンセンサー、また図にはないがSAMTORがメチオニンセンサーであることを明らかにしてきている。
特に興味深いのはロイシンセンサーのSestrin。彼らはSestrinの構造を決めて、ロイシンが結合するサイトを同定している。
さらにここに点変異を入れることでロイシンの量を感知できなくなることも示していてすごい。(Saxton et al., Science, 2016)
ここまで見せられると、本当にこの分子がアミノ酸をセンスしているというのに説得力がある。
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iBiologyの講義は3パートに分かれている2パート目までが大体このような内容。
mTORの歴史から今の研究の流れまですっきりと整理された感じがした。
次は相分離のDr.Roy ParkerかクロマチンのDr.Jan-Michael Petersかなあ。
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