DNAの傷が転写を活性化する?
細胞の中でDNAはヒストンやその他たくさんの非ヒストン性クロマチン因子によってパッキングされている。
これらの因子によるゲノム構造の制御が、正常な遺伝子発現のコントロールには重要である。
この中でHMGA2という因子が胎生期の細胞やガン細胞などで高く発現し、結構重要らしいことが長年の研究で分かってきている。
しかしながら、HMGA2の働く分子メカニズムは(その重要性の割に)あまり統一的な見解が得られず、グループ毎に各々が言いたいことを主張しているような感じである。
筆者らのグループはこれまでにHMGA2がDNA損傷応答関連因子と相互作用することを報告していたが、具体的に転写制御まで行きつく分子メカニズムはよく分かっていなかった。
今回はなんとHMGA2がDNAに傷を入れることでDNA損傷応答関連因子を呼び込み、転写を活性化するというモデルを提唱する報告を紹介する。
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そこではじめにHmga2をノックアウトした条件でγH2A.XのChIP-seqを行った。
(ほんとにγH2A.XのChIP-seqってこんなにTSSに濃縮するのかな、、??ご存知の方いらっしゃったら教えて頂きたいです、、、)
というわけで、Hmga2はγH2A.Xの呼び込みに重要である可能性が示唆された。
では、Hmga2は転写にどのような影響を与えるのだろうか?
筆者らはさらにHmga2のノックアウトマウスにおいて転写の開始を見るリン酸化ポリメラーゼIIのChIP-seqを行った。
この結果、Hmga2のノックアウトによってリン酸化ポリメラーゼII(pPol2)のTSSへの濃縮も減少することが分かった。
(ちなみに遺伝子発現も一部の遺伝子群で減少することを見ている)
というわけで、どうやらHmga2は(γH2A.Xの呼び込みを介して?)転写を正に制御するように見える。
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では、Hmga2はどのようにγH2A.Xの呼び込みを制御しているのだろうか?
筆者らは細胞をMNaseで処理してスクロース勾配法で分画することでHmga2と同じ画分に存在するタンパク質を網羅的に解析した(若干この流れはストレートでない感じがしたが、)。
この結果ヒストンシャペロンであるFACTがHmga2と同じ画分に存在し、Hmga2のノックアウトでその分画から減少することが分かった。
(このデータからはすべて標的遺伝子を3つに絞った解析)
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以下細かいので端折ってしまうと、(ごめんなさい)
Hmga2がDNAに一本鎖切断を入れる(これは以前報告がある)→FACTがやってきてγH2A.Xを呼び込む→DNA損傷応答依存的DNA脱メチル化→転写活性化というモデルらしい。
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管理人コメント
・ぶっちゃけなんか不安なデータが多い。MNase-seq、γH2A.XやHmga2やFACTのChIP-seqってこんなピークの出方で正しいのかな、、、しかも後半は見る遺伝子3つに絞っているし、どれだけ一般的なメカニズムなのかはよく分からない。
・ただクロマチン因子がDNA損傷を入れて転写を活性化する、というのはコンセプトとしては面白いかも?
Positioning of nucleosomes containing γ-H2AX precedes active DNA demethylation and transcription initiation
Stephanie Dobersch, Karla Rubio, Indrabahadur Singh, ..., Dulce Papy-Garcia & Guillermo Barreto