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ヒトでの骨幹細胞の発見

ヒトでの骨幹細胞の発見
 
私たちのまさに骨格となる骨は他の組織と同様に骨の幹細胞から生まれると考えられる。
 
このヒトにおける「骨の幹細胞」は、長らく存在こそ想定されてきたが、
その実体は未だつかまれていなかった。
 
今回の論文*では、ついにヒトでの「骨の幹細胞」を分取する方法を確立し、
その実体を同定するとともに、その特徴を記述することに成功した。
 
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筆者らは骨でのシングルセルRNAseqとこれまでの知見をもとに、
PDPN+ CD146- CD73+ CD164+
の細胞こそが、「骨の幹細胞」では考えた。
 
実際この細胞は骨を生む幹細胞足りうることを証明している。
 
また、面白いことに、ヒト骨幹細胞と、マウス骨幹細胞をマウスに打ち込むと、
ヒト骨幹細胞の方がより多くなることが分かった。
 
すなわち、幹細胞自律的に増殖能が決まっていることが示唆される。
 
そこで、ヒト骨幹細胞でのみ発現していたSOST and DNAJB6という分子をマウス骨幹細胞に過剰発現させると、
マウス骨幹細胞の増殖能も上昇することが分かった。
 
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現在、幹細胞の医療応用への取り組みが盛んである。
 
骨幹細胞も同じく外傷や病気による骨の欠損の治療に使える可能性がある。
 
今回の報告は、基礎生物学的にも応用的にもインパクトの大きい発見ではないか。
 
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*Identification of the Human Skeletal Stem Cell, Cell, 2018