Bio-Station

Bio-Stationは日々進歩する生命科学に関する知見を、整理、発信する生物系ポータルサイト、を目指します。

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

紹介できなかった論文たち_2

2018年も最後になってきたので、 今年出た論文で紹介しきれなかったものを簡単に紹介する。 Self-organization of a human organizer by combined Wnt and Nodal signalling, Nature, 2018 1924年にシュペーマンとマンゴールドの実験によって、イモリの初期…

二刀流 in Heart

今年2018年は大谷翔平がメジャーリーグでも二刀流をこなし話題になりましたね。 年の瀬ですが、Scienceにタンパク質も二刀流していたというやつが出ていたので 紹介します。 この論文では、心筋で筋小胞体とT tubeをつなぐ構造タンパク質として知られていたJ…

シングルセルChIP-seq

今回は日本初のテクニックについて紹介しようと思う。 ChIP(クロマチン免疫沈降法)は、 あるタンパク質がゲノム上のどこに張り付いているか調べる方法で、 転写因子の解析やエピジェネティクスの研究でよく使用されている。 具体的な実験としては、以下の図…

翻訳されるnon-coding RNA??

前回紹介したように、(https://jugem.hatenadiary.jp/entry/2018/12/16/145900) 近年non-codingと思われていたRNAから翻訳されていた! という報告がいくつかなされてきた。 今回紹介する論文も感染時に発現する翻訳される"non-coding"RNAを見つけた!、 と…

精子と卵子が出会うとき_2

精子と卵子がお互いを認識しあうタンパク質は受精卵の形成に極めて重要である。 先日紹介したように、https://jugem.hatenadiary.jp/entry/2018/11/27/192536 これまで哺乳類で精子-卵子間相互作用をIzumoとJunoという因子が担うこと報告されてきた。 (Izumo…

端のメチルが役に立つ?

今回は日本人研究者の論文を紹介しようと思います*。 タイトルは完全にプレスリリースのタイトルに引っ張られてます... (プレスリリースのタイトルは"メチルは端だが役に立つ") 少し前の投稿でも解説した通り、 最近新しいRNA修飾としてm6Aが再発見され、そ…

CRISPRの歴史_6

今回はゲノム編集ではなくて、基礎研究のためのCRISPRの応用法を。 先日CellにてでたCRISPR-GOというの(1)を紹介しようと思う。 遺伝子発現は転写因子やクロマチン状態などの要因で制御されることが有名ですね。 しかし近年、遺伝子発現が"遺伝子座が核内の…

CRISPRの歴史_5

今回はCRISPRを治療に使おうという潮流の論文を。 この分野では、 Juan Carlos Izpisua Belmonte (以下ベルモンテ) Lab (ソーク研究所) の成果が目覚ましい。 *ベルモンテは日本人研究者好きで知られている。 Publicationをみても日本人が1stのものも多い。 …

CRISPRの歴史_4

前回xCas9で紹介したDavid Liuの他の仕事について少し。 David Liuさん、これまで存じ上げなかったが、 2017年のNatureが選ぶ10人にも取り上げられるスーパーな研究者らしい。 経歴もなかなかすさまじく、 学部の時はド有機化学でノーベル賞ホルダーのE.J.Co…

CRISPRの歴史_3

今回はCas9の改変体について。 CRISPR-cas9は強力なゲノム編集技術だが、もちろん課題もある。 その一つが、ターゲット配列にかかる制限だ。 Cas9はガイドRNAで標的とした領域すべてを切断できるわけではなく、 標的配列の近傍にPAM(プロトスペーサー隣接モ…

CRISPRの歴史_2

前回、CRISPRの歴史について紹介したが、 Cellに昔出ていた"The Heroes of CRISPR"(Cell, 2015)という総説がかなり良かった。 どういった人々が、どのような経緯で重要な発見に至ったかが記されている。 *オープンアクセスなので誰でも読める。ぜひ。 ちなみ…

CRISPRの歴史

最近ヒトに対してCRISPRでゲノム編集を行ったというニュースが流れた。 (未だ真偽不明だが) 今でこそ、CRISPRは当たり前の技術になりつつあるが、 ゲノム編集のツールとして報告されたのは2012年と新しい。 CRISPRはどのように発見され、開発されてきたのだ…