Bio-Station

Bio-Stationは日々進歩する生命科学に関する知見を、整理、発信する生物系ポータルサイト、を目指します。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ChIA-PETの歴史

今回はタイトル通りChIA-PETという手法の解説。 私たちのゲノムには"エンハンサー"という大事な領域がある。 "エンハンサー"はその名の通り、遺伝子発現をエンハンスする領域である。 面白いことに、このエンハンサーは - 転写を活性化する遺伝子の転写開始…

論文の探し方!

たまに論文の探し方を聞かれるので、まとめておきます。生命科学系の新しい論文を探す方法です。(*本当は自分用のメモです) 自分は英語が読むのがつらいので、できるだけ日本語で情報が得られるようにしています。一応ラボに配属された学部生~大学院生向けで…

"エリート細胞"は存在するか?

iPS細胞は多くの細胞に分化できる能力を持つすごい細胞である。 ご存知のように、iPS細胞を作成する方法は山中先生らによって報告された(Takahashi & Yamanaka, 2006)。 この方法では、山中4因子といわれる転写因子(Oct3/4, Sox2. Klf4, c-Myc)を細胞に過剰…

麻酔薬の作用する細胞は?

麻酔薬は、生存状態を保ちながら知覚と随意運動能力を抑制する。 まさに魔法のような薬であり、外科手術には必須のものである。 人類史上、初めての全身麻酔による外科手術は1804年、日本人の医家、華岡青洲によって実現された。(以下肖像) 華岡青洲は朝鮮朝…

生きる長さを決めるもの

哺乳類の寿命は種によって200倍も異なっていることが知られている。 同じ地球に生きるものなのに、どうして寿命がこれほどまでに異なるのだろうか? とても魅力的な疑問であるにもかかわらず、種間で寿命の差を生み出す分子メカニズムはほとんど分かっていな…

エピジェネ因子の"じゃない方"の機能_DNAメチル化編

エピジェネティクスとは「DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステム(脳科学辞典)」として知られる。 よく知られたエピジェネ修飾は、DNAを巻き付けているヒストンのメチル化やアセチル化などの修飾だろう。このほかにもDNAのメチル化、RNA…

ニューロンの多様性を作るメカニズム

私たちは常に外界からの情報を受け取り、処理し、行動に結びつけている。 ご存知のように、これらの情報処理を行うのに重要な器官は"脳"である。 脳の中でも神経細胞、ニューロンがとても重要であることが知られている。 人間には非常に多くのニューロンが存…

ノックアウトとノックダウンの表現型が違うのは?_2

前回の記事で、ある遺伝子をノックアウトした時にその遺伝子に似た機能を持つ遺伝子の発現が上昇する"コンペンセーション"のメカニズムについてまとめた。 まとめると前回紹介したところまでで、 ノックアウトで似た遺伝子の発現が上がるのは ノックアウトに…

ノックアウトとノックダウンの表現型が違うのは?_1

生物はある遺伝子が欠失した時でも、同じような機能を持つ遺伝子を発現させるメカニズム(Genetic compensation、以下"コンペンセーション")を持っている。 よくあるのは、ある遺伝子をノックアウトした際に、ファミリー遺伝子の発現が増加するもの。 (例えば…