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新しいロドプシン

近年、光遺伝学(オプトジェネティクス)というものが開発され、神経科学を中心に強力な研究ツールになっている。
 
光遺伝学は、光に応答するイオンチャネル神経細胞に発現させておくことで、
 
光をON/OFFすることで、好きな場所の神経を、好きな時に活動させることができる
(現在最もポピュラーな例で、さらに発展的な手法も開発されてきている。)
 
この手法を用いて、~を司る神経回路などが数多く発見されてきた。
 
(ちなみに、この手法を作ったKarl Deisserothはノーベル賞受賞は時間の問題だと考えられている。)
 
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これまで、このロドプシンはタイプ1(主に微生物由来)、タイプ2(主に動物由来)が知られてきた。
 
驚くべきことに、今回の論文は全く新しいタイプのロドプシンを発見している*。
 
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筆者らは、イスラエルガリラヤ湖という湖からメタゲノム解析を行った。
 
具体的には、微生物由来光に反応する(all-trans-retinalに反応する)遺伝子を探索し、
 
新たにこれまでみつかっていなったロドプシンを同定し、ヘリオロドプシンと名付けた。
 
 
これらの構造をみると驚くべきことに、タイプ1/2とは逆向きに細胞膜にはまっているとともに、
 
プロトンは(たんぱく質内での移動は伴うが)細胞外にタンパク質から放出されることはなかった。
(チャネルといえるのか??)
 
 
さらに、このヘリオロドプシン古細菌、細菌、真核生物で検出され、地球上に豊富に存在していることが分かった。
 
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未だに新しいタンパク質がみつかるのは非常に驚きだった。
 
これまでのロドプシンと逆向きについているこの新しいロドプシン、いったい何をしているのだろうか。
 
そもそも、古細菌ロドプシン必要なのだろうか。ロドプシンは光感受以外の機能があったのだろうか。
 
自分の勉強不足もあるが、これからの研究が楽しみな論文だった。
 
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参考
* A distinct abundant group of microbial rhodopsins discovered using functional metagenomics, Nature, 2018