父親からのエピジェネティクス継承はほとんどない?
個体の多くの形質は、遺伝的なDNA情報によって説明されると考えられてきた。
しかし、生命科学研究の進歩によって、ヒストン修飾やDNA修飾など、
DNAの塩基配列変化を伴わない形質伝播が存在することが分かってきた。
(いわゆるエピジェネティックスというやつ)
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これらの研究の中で、子孫に父親のDNAメチル化状態が継承される、
可能性が示唆されてきた。
具体的には、Aguiti(アグーチ)とAxin Fusedの遺伝子座の前に
ウイルス由来配列の一種(VM-IAP)をもつマウスでは、
それらのウイルス由来遺伝子座のメチル化状態が
子孫に引き継がれることが示されてきた。
しかしながら、ゲノム全体で見たときに、
父親のメチル化状態がどの程度引き継がれるかは分かっていなかった。
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そこで今回の論文では、初めにゲノム全体でのウイルス由来配列の一種(VM-IAP)のメチル化状態を観察した。
(おそらくIAPに似た配列がゲノム中に多いので、
これまでマッピングするのが結構難しかったのか?)
ここでは、予想通り、多くのVM-IAPにメチル化が入っていることがみられている。
では、このメチル化は世代を追う際にどのように変化するのだろうか。
筆者らは、精子及び次世代でメチル化を観察した。
その結果、驚くべきことに、
精子ではメチル化状態がほとんど消失していること、
前世代のメチル化はほとんど引き継がれていないこと
が分かった。
すなわち、
父親からのエピゲノム情報はDNAメチル化ではほとんど引き継がれない可能性
が示唆された。
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読みなれないシーケンス解析が中心だったため、
データの説得力はいまいち分からなかった。
本当に父親からのエピゲノム情報は引き継がれないのだろうか、
もしくはDNA methylation independentなメカニズムによるのだろうか?
今後の研究が期待される。
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参考
Identification, Characterization, and Heritability of Murine Metastable Epialleles: Implications for Non-genetic Inheritance, Cell, 2018