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Eat meシグナルが大人の幹細胞の枯渇を防ぐ

Eat meシグナルが大人の幹細胞の枯渇を防ぐ!
 
Autocrine Mfge8 Signaling Prevents Developmental Exhaustion of the Adult Neural Stem Cell Pool, Cell stem cell, 2018
Yi Zhou, Allison M.Bond,..., Guo-li Ming and Hong jun Song
 
生物の体において、不要になった細胞はアポトーシスという機構によって自己死を迎える。
 
これらの細胞は免疫細胞に貪食され、速やかに除去される必要がある。
 
このとき死にゆく細胞と貪食細胞のコミュニケーションをとるのがMFG-E8というタンパク質である。
 
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これまでMFG-E8は、この細胞死のコンテクストでよく研究が進められていた。
 
しかし今回の論文ではなんと、このMFG-E8が大人の神経幹細胞が異常に増殖し、枯渇するのを防いでいる、ことを明らかにした。
 
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実験は定石に則っており、とても分かりやすい。
 
はじめに、彼らが以前に報告していたRNA seqの結果から、このMFG-E8が海馬の神経幹細胞に多く発現していることを明らかにする。
 
ではその機能は何だろうか?
 
彼らはMfge8を神経幹細胞でだけノックアウトすることで、大人の神経幹細胞の数が減少することを示した。
 
一方で、このとき若いころの神経幹細胞の分裂が亢進していたことから、
MFG-E8は若年期の神経幹細胞の異常な分裂を抑制し、幹細胞が枯渇するのを防いでいるのであろう。
 
カニズムとして、MFG-E8はmTORというシグナルを介して機能を発揮していることを明らかにしている。
 
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つぶやき
 
これまで主に免疫学の分野で研究されていたMFG-E8が神経幹細胞の運命に影響しているという概念は新しい。
 
このMfge8は神経幹細胞に留まらず、他の組織幹細胞でも発現しているらしい。
 
MFG-E8による幹細胞運命制御が他の組織でも機能している一般的なメカニズムである可能性もある。