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シングルセルMNase-seq

細胞の中で遺伝子の発現を制御するメカニズムとして、クロマチン*の状態が大切であることがよく分かっている。
 
すなわち、ある遺伝子の転写開始点付近がオープンであればその遺伝子は発現しやすく(ユークロマチン)、
クローズであれば遺伝子発現はしにくい(ヘテロクロマチン)。
 
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このクロマチンの開き方を調べる手法として、
 
DNaseⅠ sensitivity assay, MNase seq (DNaseⅠ/MNaseというDNA切断酵素が近づきやすい=クロマチンが開いている)や、
 
ATAC-seq (トランスポゼースというDNA切断活性をもつ酵素がアクセスしやすい場所=クロマチンが開いている)などが知られてきた。
 
DNAaseⅠ sensitivity assay ***
 
しかしながら、これまでの解析の多くは、細胞集団で(何万もの細胞をまとめて)解析を行っていたので、
 
単一細胞ごとのヘテロさ(≒Diversity)を無視していた。
 
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そこで、今回の論文****ではこれまで細胞集団で用いられていた、MNase-seqを改良し、
 
シングルセルでクロマチンの開き方をみる手法を確立した
 
その結果、それぞれの細胞(同じ細胞種であっても)でクロマチンの開き方は1細胞ごとに異なり、
 
遺伝子発現との相関もあることが分かった。
 
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この論文をみたとき、シングルセルATAC-seqがあるのに、どうしてシングルセルMNase-seqがNatureにでるのか不思議だった。
 
一応、論文の中で比較していて、それによると、シングルセルMNase-seqの方が感度が少し高い?らしい。
 
また、開いているかだけではなくて、1ヌクレオソームなのか、それよりもこまかいサブヌクレオソームなのか分かるらしい。
 
(これがATACseqでできないのかは分からないのだが。)
 
もちろん選択肢が多いに越したことはないが、ATAC-seqとの差ははっきりしなかった。
 
数年後、ATAC-seqにかわりMNase-seqがクロマチン研究のスタンダードとなりうるだろうか。
 
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*DNAとDNAをパッキングするヒストンなどのかたまり
***Wikipwdiaより
****Principles of nucleosome organization revealed by single-cell micrococcal nuclease sequencing, Nature, 2018