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2020年生命科学研究まとめ&2021年展望

今回は大みそかということで、管理人の独断と偏見による2020年生命科学研究のまとめと2021年の展望を紹介していこうと思います。
学生の漫談みたいな感じなのであしからず。昨年の2019年まとめ&2020年展望はこちら
全体のまとめ、神経幹細胞研究、クロマチン研究という感じの流れです。最後にバイオステーションの来年の目標とお願いがあります。
 
全体
情勢を反映して新型コロナウイルス関連の論文はめちゃくちゃ多かったですね。本当に文字通り毎週三大誌に載っていた気がします。正直全然内容はフォローできていないのですが、喫緊の事態になると爆発的に研究が進むんだなと思いました。日本からの論文は少なかったように感じるのは残念です。しばらくは新型コロナウイルス関連論文はこの勢いで報告されていくのではないかと思います。
 
また新型コロナウイルスの影響でオンラインセミナーが多かったのは良かったです。神経系とかクロマチン関連とか各分野オンラインセミナーをやっていました。普通なら国際学会でも行かないと聞けないような話をたくさん聞けるのは良かったですね。こういった試みはコロナが収まっても続いてほしいなぁ。
 
冬にはノーベル化学賞がCharpentierさんとDoudnaさんに決まりました。発見からノーベル賞まで早いですが、研究の現場で広く使われているので納得です。
 
流行っていた研究領域は、うーん、よく分からないですね。クライオEMによる構造解析はトップジャーナルにすごくたくさん出ていましたが、管理人があんまりすごさを理解できていないのでコメントしづらい、、というわけで、管理人が比較的理解できる分野のまとめに移ります。
 
 
神経幹細胞研究(特に胎生期)
今年はトップジャーナルに神経幹細胞研究は全然載りませんでしたね、、2019年はそこそこ出ていただけにどうしたんだという感じですが、、胎生期神経幹細胞研究で三大誌に載ったのはSong Hai ShiのNaturePierre VanderhaeghenのScienceDaniel A. LimのScienceだけかな(ぎりぎりARHGAP11Bバイステでも紹介したPurterb-seqも?他にあったら教えて下さい!)。どれも最先端のスーパーテクノロジーというわけではない古典的な実験で新しい概念を提唱しているのはすごいと思います。
 
全体のトレンドとしては純粋な神経発生だけではちょっと苦しくて、進化とか疾患とかと結びつけていかないとなあ、という感じでしょうか。もちろんまだまだ分かっていない重要な課題はたくさんあるので来年以降も神経幹細胞関連の面白い論文に期待です。
 
日本からは、松崎研の論文が年始に発表されていました。神経幹細胞の分裂様式と神経幹細胞の足(Apical endfoot)の動きの関係をライブイメージングやFRETなど(少なくともこの分野では簡単にできる実験ではない)綿密な実験で示していてとても自分にはできないすごい研究だと思いました。みなさま、大変おめでとうございます。
 
あとやはり後藤研からの大脳の神経幹細胞の背腹軸決定にエピジェネ因子が関わるという報告でしょうか。背腹軸制御はとっても大事なだけにこれまでShh、WntやBMPなどスター因子の関与はたくさん報告されてきたものの、それらがどのように制御されているのかは不明でした。今回はヒストン修飾に関与するポリコーム因子群がWnt、BMPの上流となり背腹軸決定に貢献することが示されました。背腹軸の異常という想定していなかった表現型を見出すところから始まり、メカニズムまで緻密に詰められた超絶スーパーなお仕事です。
 
(他にも宮田研のLzts1とか難波さんのARHGAP11Bとかもあったなーと思ってたらどちらも2019年でした、、、記事をご覧の方で自分も胎生期神経幹細胞で2020年に論文出したぞ、という方はご連絡いただけると幸いです。)
 
 
クロマチン関連といっても分野広すぎですよね、、、管理人がフォローできる範囲だと、今年は"ヌクレオソーム+何かの因子"の構造解析がたくさんトップジャーナルに掲載されていました。SOX2, OCT3/4, cGAS(5報同時)、PARP、NSD、DNMT、BAF(2報)とかですかね(もっとあった気もする)。今後は"ヌクレオソーム+何か"に留まらない構造解析とかがメインになってくるのでしょうか。
 
個人的興味もあるかもしれませんが、タンパク質分解システムを用いてクロマチン因子の急性の欠損がゲノム構造に与える影響を解析する論文も多かったように思います。昔紹介したNELFとか、プレプリにHP1とかも上がっていた気がします(他にもポリコームは前からやられている気がする)。ここ何年かで代表的な因子がやられつくしていくのではないかと期待しています。
 
また良くも悪くも印象に残ったのはRichard YoungのMeCP2がphase separationするやつでしょうか。直前にCell Researchに同じような論文が出ているのにNatureに通してしまうのはさすがという感じです。しかもMeCP2がphase separationしますという結果と疾患の点変異だけでよくNatureだなと。まだ魔法の言葉phase separationの効力は少し残っているようです。
 
 
バイオステーション来年の目標とお願い
今年もご愛顧いただきありがとうございます。バイステ、来年の目標が一つとお願いが二つあります。
 
目標:もう少し紹介できる論文の幅を広げる!
宣言しとけば頑張れるような気がしなくもないので宣言しました。頑張ります。
 
一つ目のお願い:バイステよく間違えたこと書いているので気づいた方はお伝えいただけると幸いです!
(もちろん間違いはなくしたいですが、、)できれば優しめの表現でお願いしたいです笑。
 
二つ目のお願い:なんか色々バイステ手伝ってくださる方いたら教えてください!
自分も論文紹介してみたいとか、バイステのブログのフォーマットダサいから作りたいとか、バイステの間違いがひどいから添削したいとか、そういう感じのことで何かありましたらご連絡ください。直接言ってもらっても、メールでもツイッターのDMでもなんでもいいです。
 
というわけで、来年もよろしくお願いします!!