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ペルオキシソームの新しい機能を発見! (筆頭著者による論文紹介)

今回、筆頭著者による論文紹介、ということで、東大薬の田中秀明さんにご寄稿いただきました!

比較的マイナーなオルガネラ、ペルオキシソームの新しい機能を発見したという報告です。とても丁寧に書いていただきました!ぜひ最後までご覧ください!

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ペルオキシソームの新しい機能を発見!-ミトコンドリアの動態・細胞死経路の制御-

 

皆様、ペルオキシソームというオルガネラをご存じでしょうか?

ペルオキシソームはほぼすべての細胞がもつ脂質一重膜で覆われたオルガネラであり、主に脂肪酸の酸化や活性酸素の除去といった細胞の代謝機能を担うことが知られています。

 

細胞内において、ペルオキシン遺伝子群によって形成されています。ペルオキシン遺伝子群が欠損することで、ペルオキシソームの機能不全が引き起こされます。ヒトにおいて、ペルオキシン遺伝子の欠損は、ツェルベーガー症候群をはじめとする非常に重篤な疾患の原因となります。ツェルベーガー症候群の患者は筋緊張低下、顔面形成異常、神経遅滞など多臓器にわたる影響が表れ、重篤な場合では出生後一年以内に死亡してしまいます。

 

このことから、ペルオキシソームが生体内で重要な役割を果たしていることは明らかです。しかしながら、ペルオキシソームの機能解析はあまり進んでいません。恐らく読者の方も、「教科書で見た気がするけど、あまり覚えてないな」くらいの認識ではないでしょうか?

 

私は、この重要だけれど謎の多いオルガネラ、ペルオキシソームに注目し、その機能解析を行うことにしました。はじめは何に注目すればいいかわからず、暗中模索の時期もありましたが、最終的にミトコンドリアとの新たな相互作用を見出し、論文としてまとめることができました。ここでは、代表的な結果を紹介しつつ、どのように自分の研究が進んでいったかをまとめてみたいと思います。参考にしていただければ幸いです。

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ペルオキシソームの機能を探索すべく、まずペルオキシソーム形成に必須の遺伝子Pex3をCRISPR-Cas9システムでKOし、ペルオキシソーム欠損細胞を樹立しました。免疫細胞染色を行うと、実際この細胞ではペルオキシソームが完全に消失していることが観察されました。

ここで、とりあえずほかにもいろいろなオルガネラを染色してみよう、ということになり、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリアなど様々なオルガネラを観察してみました。色々と面白いことが分かったのですが、一番大きな表現型が「Pex3のノックアウトによってミトコンドリアが顕著に断片化している」というものでした。この現象は面白い!と思い、ペルオキシソームによるミトコンドリア動態への影響についてさらに調べることにしました。

 

ペルオキシソームが本当にミトコンドリアの動態制御にかかわるのか?ということをさらに調べるため、ペルオキシソームの十分性について検討することにしました。ここで用いたのが、4-PBA(4-フェニル酪酸)です。これは、PPARシグナルとPex11の経路を介してペルオキシソームを増加させる薬剤です。これを細胞に添加すると、実際にペルオキシソームが増加することが観察されました。この時、ミトコンドリアの形態はどうなっているかというと、驚くべきことに4-PBAによりミトコンドリアが顕著に伸長する像が観察されました。この4-PBAによるミトコンドリアの伸長が本当にペルオキシソームを介しているかを調べるため、同じ実験をペルオキシソーム欠損細胞で行うと、通常細胞で見られたミトコンドリアの伸長は観察されませんでした。このことから、4-PBAはペルオキシソームを増加させることでミトコンドリアを伸長させていることが示唆されました。

 

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ここまでの結果から、ペルオキシソームの新たな機能としてミトコンドリアの動態を伸長方向へと制御していることが分かりました。次に私は、

①ペルオキシソームがミトコンドリア動態を制御するメカニズム

②ペルオキシソームがミトコンドリアを制御する生物学的意義

について検証することにしました。

 

①: ペルオキシソームはどのようにミトコンドリア動態を制御しているのでしょうか?そこで注目したのは、ミトコンドリアの分裂を主に担う分子、Drp1です。この分子はミトコンドリアだけでなくペルオキシソームの分裂にも寄与していて、実際ペルオキシソームにもDrp1は局在することが知られています。そこで、

ペルオキシソームはDrp1の制御を介してミトコンドリアの局在を調節する」という仮説を考え、検証することにしました。はじめにDrp1の局在を観察すると、ペルオキシソーム欠損細胞でミトコンドリア上のDrp1が増加していることが明らかになりました。さらに、このDrp1がペルオキシソーム欠損細胞におけるミトコンドリア断片化を起こしているのかを検証するためにDrp1のKDを行うと、ペルオキシソーム欠損細胞におけるミトコンドリア断片化は顕著に抑制されました。以上の結果より、ペルオキシソームはDrp1の局在制御を介してミトコンドリアの形態を制御することが分かりました。

 

②ペルオキシソームがミトコンドリアの形態を制御する意義について、ペルオキシソームが欠損するとミトコンドリアが断片化することは先述しました。ミトコンドリアの断片化は膜間腔タンパク質シトクロムCの細胞質放出、並びにアポトーシス経路のカスパーゼ活性化にかかわります。そこでシトクロムCを観察すると、驚いたことにペルオキシソーム欠損細胞では通常ミトコンドリアにいるシトクロムC が細胞質に拡散していました。さらにこのとき、実行型カスパーゼの活性化も起こっていることも明らかになりました。すなわち、ペルオキシソームが欠損することで細胞死誘導経路が活性化していることが分かりました。では、その下流アポトーシスは起こっているのでしょうか?

AnnexinV binding assayによって細胞のアポトーシスを検出すると、想定とは異なり、ペルオキシソーム欠損細胞ではアポトーシスはほとんど起きていませんでした。すなわち、ペルオキシソームの欠損によりシトクロムCの拡散・カスパーゼの活性化は起こるものの、アポトーシスを起こすには不十分であることが示唆されました。

 

では、この細胞死を起こさないsub-apoptoticなカスパーゼの活性化を抑制することにはどういった意味があるのでしょうか?私は、細胞のストレス感受性に注目しました。

我々の細胞は日々様々なストレス(酸化ストレス、小胞体ストレス、DNAダメージ、etc…)にさらされています。ストレスがかかった細胞は、まずそのストレスを解消するための経路を活性化させます。しかし、ストレスがかかり続けたり、過剰なストレスがかかったりした場合は、細胞はアポトーシスを選択します。私は、ペルオキシソームがミトコンドリアを介したストレスによるアポトーシスを調節している可能性を考えました。そのため、ペルオキシソーム欠損細胞にDNAダメージを添加し、アポトーシスを検出すると、通常細胞に比較してアポトーシスする細胞の割合が顕著に増加しました。このことから、ペルオキシソームによるカスパーゼ活性化調節は、細胞のストレス感受性にかかわることが示唆されました。

 

全体をまとめると、私は本論文においてペルオキシソームがDrp1の局在を介してミトコンドリアの動態を伸長方向へと制御している、という新たな機能を見出しました。この機能の破綻はミトコンドリアの断片化、シトクロムCの拡散、細胞死経路の活性化を引き起こすことも見出しました。

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ミトコンドリアの形態は、様々な生命現象にかかわっています。先述のアポトーシスはもちろん、神経幹細胞の分化や、ニューロンの軸索におけるミトコンドリアの適切な配置にもミトコンドリア動態は重要です。本研究でミトコンドリア動態をペルオキシソームが制御することが明らかになったことにより、ペルオキシソームもまたそういった生命現象にかかわりうることが分かり、よりペルオキシソームの重要性が強調されたかと考えています。

さらに、本研究で見出したペルオキシソームによるミトコンドリアの形態制御の破綻が、先述のツェルベーガー症候群(ペルオキシソーム欠損症候群)の発症にかかわっている可能性もあります。特に、ミトコンドリア動態やカスパーゼの異常活性化は神経変性疾患にかかわるので、ツェルベーガー症候群における神経変性疾患様の症状にミトコンドリア動態制御破綻が関与する可能性を現在検証しています。

 

結果を丁寧に説明してきましたが、結局のところ私が読者の皆様に覚えておいていただきたいポイントは、「ペルオキシソームって結構大事なオルガネラなんだな」ということです。この機会にぜひ覚えておいてください!

 

発表論文

Peroxisomes control mitochondrial dynamics and the mitochondrion-dependent pathway of apoptosis, Journal of Cell Science, 2019

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バイオステーションでは、筆頭著者の方による論文紹介を募集しています。どのような分量でも構いませんので、ぜひご寄稿いただけると幸いです。

詳細につきましては、以下のリンクもご覧ください

jugem.hatenadiary.jp

今後ともバイオステーションをよろしくお願いいたします。

 

神経前駆細胞の大移動@がん

 
今回紹介する論文は、これまでの紹介してきた中でもトップクラスの衝撃度です。どうぞ最後まで。
 
がんは日本人の死因の何割かを占める。闘病は大変なので、治せるならば治したほうがいい。
 
ではそもそも、がんはどうしてできてしまうのだろうか。これまで、たくさんの人たちが、発症に関わる因子をたくさんみつけてきた。その中で、意外なことに神経線維ががんに重要らしいということが分かっている。
 
これらの研究によると、がんには神経線維が異常に侵入していて、がんの増殖を手助けしているらしい。
 
実際、いくつかのがんでは神経伝達を阻害すると、がんが小さくなったりすることが知らている。
 
しかしながら、この神経はどこからやってくるのか?ということは分かっていなかった。
 
今回は、このがんの中の神経は、脳室から巡ってきた神経前駆細胞に由来するという驚きの論文を紹介。
 
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以下が今回の論文の流れ
 
- そもそも神経浸潤はヒトのがん患者にも認められるか?
 
ヒトの前立腺がん患者の組織を染色、神経の数と症状の相関を検証
 
→人の患者でもがんの中に神経がある!さらに、神経の数が多いほど患者さんは早い期間で亡くなっていた
 
がんの神経への浸潤ががんの悪性化を引き起こしている可能性がある!
 
 
- 分子メカニズムに迫るため、マウスモデルを作成
 
前立腺でのみ、がん遺伝子Mycを過剰発現するマウスを作成。このマウスでは前立腺癌を発症。このとき、前立腺がんでは神経線維がみられる。
 
面白いことに、がんの中には神経線維だけではなく、神経前駆細胞も存在した。
 
→この神経前駆細胞を単離すると神経(ニューロン)を産生する。おそらくは、この神経前駆細胞ががんのでの神経の産生に重要だろう。
 
 
- 神経前駆細胞はどこからやってくるか?
 
ここが、この論文のハイライトの一つ!
 
成体において、神経幹細胞が存在するのは2か所。脳室下体と海馬である。
 
それぞれに細胞をラベルするウイルスを打ち込み挙動をトレーシング
 
脳室下体の神経前駆細胞前立腺まで移動してきている!!(海馬由来の神経前駆細胞は移動しない)
 
さらに、血中においても脳室下体由来の神経前駆細胞がある!!このとき、がんでないマウスでは神経前駆細胞の血中への浸潤はみられない。
 
これらの結果は、がんにおいて脳室下体の神経前駆細胞が、血中に流れ出してがんに生着し、がんを手助けるすることを示唆する!
 
*神経前駆細胞が脳の外に出ていくというのは、これまで考えらてもいなかったことでとても驚き!!
 
 
- この神経幹細胞の移動は他のがんにおいてもみられるか?
 
肺がん、乳癌の系、またMyc過剰発現でない前立腺がんにおいて同様の実験
 
→いずれのがんにおいても、神経幹細胞が脳から血管に流出し、がんに生着する!!
 
すなわち、神経幹細胞の移動と生着は、がん一般に起こりうる性質である可能性がある!すごい!
 
 
- 神経細胞の浸潤はがんの悪性化に重要か?
 
筆者は、神経前駆細胞を単離し、移植
 
→神経前駆細胞が移植されたマウスではがんのサイズが大きくなる!
 
つまり、神経前駆細胞が生着することががんの増殖に大事!
 
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今回の結果から、がんになると脳から神経前駆細胞が流れ出してがんに生着すること、この神経ががんの増殖に大事であること、が示唆された。
 
以下がまとめ図

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ちなみに、がんの患者では認知機能が低下してしまうことがあることが知られている。もしかしたら、この原因は、がんになると神経前駆細胞ががんの方に行っちゃって脳の神経前駆細胞が不足することかもね、というのが筆者らのディスカッション。
 
*いやいやそんなまさか、とは思ってしまうが、意外とそんなことあったりして。
 
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神経前駆細胞が脳の外に出てしまう、というのは衝撃的。というかあまりにも想像の範疇を超えているので最初は何を言っているのか分からかった。
 
とはいえ、Natureに通るだけあるというか、読んでいると、そういうこともあるかもしれないと思えるような気もしてきた。
 
 
あとは、本当にこれが本当だと思えるためには、どうしてがんのときに神経前駆細胞が脳の外に出ることができるのか、が明らかになるとよいと思った。
 
一つの候補としてはエクソソームとかが面白いのかもしれない。例えば、がんは自身のだすエクソソームによって転移先のニッチを形成することが知られているためである。
 
もしかしたら、がんの出すエクソソームがシグナルとなって、神経前駆細胞の流出を手助けしているのかもしれない、とか。
 
いずれにしても、続報が楽しみな論文だと思った。
 
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参考
Progenitors from the central nervous system drive neurogenesis in cancer, Nature, 2019
Nerve cells from the brain invade prostate tumours, News and views in Nature, 2019

哺乳類の繁栄を支える遺伝子

 
哺乳類が地球で繁栄したキーポイントの一つは、寒冷環境でも体温を維持できるようになったことである。
 
この驚異的な特性を得るために、哺乳類は褐色脂肪細胞という特殊な脂肪細胞を獲得してきた。
 
褐色脂肪細胞は「脂肪細胞」のイメージとは裏腹に、脂肪を分解して熱を産生させることが知られる。これは、いわゆる皮下脂肪や内臓脂肪などの白色脂肪細胞が脂肪を蓄えるのとは極めて対照的である。(以下の図も参考に)
 
 
褐色脂肪細胞は交感神経などからの投射を受け、寒い状態などを感知すると熱を産生して体温の維持に働く。
 
また、熱を産生するという特徴から、肥満に対する介入のターゲットしても注目されている。
 
しかし、これほどの重要性にもかかわらず、褐色脂肪細胞の形成を可能にする分子メカニズムは不明な点が多く残っている。
 
今回は、褐色脂肪細胞形成に重要な、哺乳類のみが持つ遺伝子を新しく同定した、という論文を紹介する。
 
 
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以下が今回の論文の内容!
 
- どのような遺伝子が褐色脂肪細胞の形成に重要か?
 
筆者らはこれまでに、脱メチル化酵素LSD1が褐色脂肪細胞の形成に重要であることを報告していた(Gene&dev., 2016)。
 
そこで、LSD1をノックアウトした際に発現の低下する遺伝子群を網羅的に探索
 
→LSD1でCLSTN3というシナプス関連因子の発現が劇的に低下。
 
このとき、驚くべきことに、CLSTN3の近傍で、これまで遺伝子があると思われていなかったゲノム領域からRNAが発現していることを発見!
 
この新規遺伝子は、CTSTN3と共通のエクソンも持つのでCLSTN3bと新しく命名
 
いくつかの解析により、CLSTN3bは実際にタンパク質になること(ノンコーディングRNAではないこと)、また小胞体に局在することを見出す。
 
 
興味深いことに、CLSTN3bのホモログ(ひた遺伝子)は、哺乳類は広く存在する一方で、カメには存在しない
 

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CLSTN3bは哺乳類が進化の過程で獲得した遺伝子であろう!
(ちなみに一番上の×はカモノハシ。ネット情報によるとカモノハシは体温制御が緩いらしいからClstn3b持っていないのかも)
 
 
- Clstn3bは褐色脂肪細胞の形成に重要か?
 
Clstn3bをノックアウト
 
→Clstn3bノックアウトで褐色脂肪細胞は機能不全。Clstn3bは褐色脂肪細胞に大事。
 
 
- Clstn3bは体温維持に重要か?
 
Clstn3bをノックアウトして低温環境下に置く
 
野生型では低温環境でもある程度体温維持できるが、Clstn3bをノックアウトすると低体温になる(低温環境に弱くなる)
 
さらに、Clstn3bを過剰発現するマウスを作成
 
→Clstn3b過剰発現マウスは、低温環境下でもより体温下がりにくい
 
また、驚くべきことに、Clstn3b過剰発現マウスは高カロリー食を与えても太りにくい!(おそらくは褐色脂肪酸による脂肪代謝が増加するため)
 
以上から、新しく同定された遺伝子、Clstn3bは哺乳類特有の遺伝子で、褐色脂肪細胞および体温維持に大事な遺伝子であることが分かった!
 
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- Clstn3bが褐色脂肪細胞の形成を誘導するメカニズムは?
 
Clstn3bをノックアウトしてMS
 
S100bのタンパク質量がClstn3bノックアウトで減少。S100bはアストロサイトのマーカーとしても知られ、細胞内のカルシウム濃度制御に重要ということが知られていた。
 
 
S100bはClstn3bの下流として大事か?
 
S100bをノックアウトしておくと、Clstn3bの過剰発現の効果は見られなくなる。Clstn3b→S100bの流れが大事
 
 
S100bはなぜ大事か?
筆者らは、Clstn3bのノックアウトで交感神経からの投射が減少することを見出す。S100bは投射に関わるかも?
 
→in vitroの系でS100bをかけると、S100bは神経投射を誘導することが分かった!*S100bに神経投射を制御する機能があるとは知られていなかったはずなので驚き!
 
 
以上から、Clstn3bはS100bを介して交感神経投射を誘導することで褐色脂肪細胞の形成維持に貢献する可能性を示唆!
 
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今回の結果から、哺乳類が進化の過程で新しく獲得した遺伝子Clstn3bが褐色脂肪細胞の形成維持に重要であることが初めてわかった。
 
この結果は、褐色脂肪細胞の形成維持を可能にする分子メカニズムを明らかにするにとどまらず、肥満などの治療にも役立つ可能性がある。
 
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新しい遺伝子の発見!、というのに惹かれて紹介しようと思った。
 
リボソームプロファイリングとかではなくて、直にRNAseqの可視化から新規遺伝子をとっていて面白い。
 
普通はそんなにまじまじと可視化の結果をみることはないですが、こういう一見無駄なことが重要な発見につながることもあるのですかね。
 
Clstn3bが褐色脂肪細胞の形成維持に大事なのは分かったが、Clstn3b自身が何をしているかもう少し突っ込んでくれると分かった感があってよかった。まあ、もうそのテーマは進めているのだろうけど。
 
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参考
- Innervation of thermogenic adipose tissue via a calsyntenin 3β–S100b axis, Nature, 2019
- 脂肪細胞の画像引用/ https://nijiiro-seikotuin.com/
 
 

精子のpHセンサー

精子卵子の近くに来ると、ハイパーアクティベーションを起こして卵子に突っ込む。
 
このハイパーアクティベーションには精子へのカルシウムイオンの急速な流入が必要であることが知れている。
 
これまで、このカルシウムイオンの流入を可能にするカルシウムチャネルとしてCatSperというのが知られていた(Nature, 2011)。
 
このハイパーアクティベーションは、ホルモン精子の周りのpH変化、の二つによって活性が制御されるとされている。
 
これまで、CatSperがホルモンに応答する分子メカニズムは分かっていが、pHをどのように感知しているのかは不明であった
 
今回このpHセンサーを同定したという論文を紹介。
 
 
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pHセンサーたりうる因子は何か?
 
筆者らはCatSperに結合するタンパク質が大事だろうと考え、CatSper結合タンパク質をIP-MSで解析。
 
→その結果、既知のCatSper構成因子と共に、EFCAB9という因子を同定!
 
 
次に、EFCAB9がpHセンサーか?を検証
 
→野生型ではpHを変えるとカルシウム濃度変化するが、EFCAB9をノックアウトするとこれがおこらない。
→EFCAB9がpHセンサーかも。
(*なぜEFCAB9がpHセンサーかもしれないと目を付けたのかは謎。)
 
 
生理的に意味があるか?
 
EFCAB9のノックアウト精子を観察
 
→ハイパーアクティベーションが起きず、受精がうまくいかない。
→EFCAB9は生理的にも大事!
 
 
一応下にグラフィカルアブストラクトを掲載。
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長年不明であったpHセンサーを取れたのは大きい発見なのではないか?
 
ただ、どのようにpHを感知しているのかはイマイチ分からなかった。こういう時こそ構造とか見てみたくなる。
 
他の酸センサーにも共通なメカニズムがあると面白いと思った。
 
(あまり気の利いたコメントができない...)
 
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参考
Dual Sensing of Physiologic pH and Calcium by EFCAB9 Regulates Sperm Motility, Cell, 2019

細胞核構造のダイナミックな変化が学習に大事!

 
神経細胞は、神経活動に合わせて遺伝子発現を変化させる必要がある、という点で少し特殊な細胞である。
 
この神経活動依存的な遺伝子発現の制御は学習や記憶といった高次機能にとても重要なので、これまで多くの研究者たちの興味を引いてきた。
 
これまで研究の結果、神経活動依存的な遺伝子発現制御のメカニズムとして、クロマチン状態の変化が大事であることが分かりつつある。
 
しかしながら、神経活動依存的なクロマチン状態の変化が、そもそも本当に生体で起きているのか?本当に遺伝子発現や脳の高次機能に大事なのか?ということは意外にもこれまで分かっていなかった。
 
今回、生体において起きるエピジェネティクス状態の変化を記述し、その生理学的意義に迫った論文を紹介する。
 
*責任著者のアザッド・ボニーは、神経活動依存的な遺伝子発現をずっとやっているマイケル・グリーンバーグの弟子。一度お話したことがあるが、ダンディーなおじさんだった。
ちなみに2016年には、神経活動依存的な遺伝子発現を終止するのにヒストン脱アセチル化が重要、というのをScienceにだしている。
 
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繰り返しになるが、学習の時に生体で神経活動依存的なエピジェネ変化が起きるか?というのは超重要な問題である。
 
この重要性にもかかわらず、これまでこの疑問に迫ることができなかった原因として、学習時にどの神経細胞が活動するのが重要なのか分かっていなかった、ことが挙げられる(おそらく...)。
 
 
そこでまず、筆者らは、驚愕反射の学習に小脳の前葉背側虫部の顆粒細胞の活動が重要(以下ADCVニューロン)であることを示す。
 
*驚愕反射とは、マウスの前にネコのおもちゃを置くと、びっくりして後ずさりする、というやつ。毎回おもちゃを置く前にライトを当てるようにすると、マウスは学習してライトだけで後ずさりするようになる。これが驚愕反射に対する学習。
 
一応ADCVニューロンの場所を下の図にお示しする(小脳のモデル図)。ただし領域がどこであるかということはそれほど重要ではない。
 
具体的な実験としては、このADCVニューロンの活動をオプトジェネティクスや薬理学的手法で抑制しておくと学習効率が悪くなることなどをみている。
 
以上の結果から、学習時にADCVニューロンが活動するのが大事であることが分かった。
 
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では、この神経細胞が活動する際に、クロマチン状態にどのような変化があるのだろうか?
 
筆者らはADCVニューロンをオプトジェネティクスで活性化したのち、クロマチン状態を検証した。
 
具体的にはH3K27me3, H3K27AcやH3K4meなどのヒストン修飾の修飾量を検証している。
 
この結果、遺伝子発現が上昇する遺伝子でH3K27Acの修飾量が増加していることを見出した。(一方、H3K27me3やH3K4me3の修飾量は変化しないらしい。それはそれで面白い。)さらにこのとき、どのようなエピジェネ状態が変化したかを網羅的に検証している。
 
これにより(たぶん世界で初めて)、in vivoにおいても神経活動依存的にクロマチン状態が変化していることが示唆された
 
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この結果からさらに筆者らは神経活動に伴って、ヒストン修飾量だけではなく、核構造自体がダイナミックに変化している可能性を考えた。
 
この可能性に迫るため、筆者らはHiCを行った。*HiCとは、物理的に近接したゲノム領域を結合させてシーケンスすることで、どのゲノム領域が核の中で近接してるのか調べる方法。
 
この結果、神経活動によって、発現が上昇する遺伝子で長い距離のプロモーター-エンハンサーの相互作用が増加していることが分かった。
 
結果をいくつか割愛するが、これらの実験によって、神経活動によってある遺伝子座のクロマチン状態が少し変わる、のではなく、細胞核のゲノム状態がダイナミックに変化している可能性が示唆された。*面白い!!
 
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では、このクロマチン状態の変化は本当に学習といった脳の高次機能に重要なのだろうか?
 
この疑問に迫るため、筆者らはコヒーシン複合体のひとつRad21をノックアウトした。
 
下の図のように、コヒーシンはゲノム同士の結合を司ることで、高次構造の形成に大きく貢献することが知られている。

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このとき、このRad21ノックアウトマウスでは、活動依存的なクロマチン構造の変化が一部見られなくなるとともに、活動で発現が変動する遺伝子の発現変化も一部キャンセルされていた。
つまり、遺伝子発現の変化にクロマチン状態の変化は重要であることが示唆された。
 
さらに、筆者らは驚くべきことに、Rad21ノックアウトマウスでは、驚愕反射の学習効率も減少していることを明らかにする
 
すなわち、神経活動依存的なクロマチン状態の変化は、学習といった脳の高次機能にも重要であることが示唆された
 
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in vivoで刺激依存的にクロマチン状態が変化すること、そしてそれが脳の高次機能に重要であることを明らかにしたのは素晴らしい。(まだこういう報告はなかったのか、という気もしたが。)
 
もしこれでin vivoではクロマチン状態変化みれませんとか、高次機能にはそんな大事じゃありません、とかだったら結構この分野が揺らいでいた気がするので、今回の報告は良かった。
 
 
これまでのように、どのような遺伝子が発現変動するのか、という疑問に迫るのはちろん大事である。
しかし、なぜそれらの遺伝子の発現が変動するようになるのか、という一段違う階層の疑問に迫るためにも、エピジェネはじめクロマチンの研究は重要だと思った。
 
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参考
Sensory experience remodels genome architecture in neural circuit to drive motor learning, Nature, 2019
 

ATAC-seqの歴史

 
遺伝子の発現がどのように制御されているか知ることは、生物学の根幹である。
 
これまでの古典的な研究で、遺伝子の発現はプロモーターやエンハンサーの活性で制御されることが分かってきた。
 
さらに最近、このプロモーターやエンハンサーのクロマチン(DNAとヒストンの複合体)状態の開き具合、が重要であることが分かりつつある。
 
 
上がモデル図。上のようなヘテロクロマチンといわれる領域ではクロマチンが閉じていて、遺伝子発現はオフになる傾向がある。
一方、下のようなユークロマチンではクロマチンが開いていて、発現はオンになっている傾向がある。
 
 
では、このクロマチンの開き方を調べる手法にはどのようなものがあるだろうか?
 
今回の記事では、現在主流となりつつあるATAC-seqについて紹介する。
ちなみに、日本人はアタックと呼んでいると思う。海外の人はエィタックと発音すると思う。
 
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ATAC-seq以前に開いたクロマチン領域を調べる方法として使われていたのは、DNase-seq(Genome Research, 2006)やFAIRE-seq(Nature protocols, 2012)である。
 
DNase-seqはDNAを切断する酵素(DNase)が開いたところだけにアクセスできる、という原理。後述するが、ATACと似ている(ATACが概念的にDNase-seqを真似たのだろうけど。)
 
FAIRE-seqはホルムアミドでヒストンとDNAを固定するという手法。酵素を使わないので比較的安い。
 
以下モデル図
 
 
しかし、DNase-seqもFAIRE-seqも
- 実験に数日かかる
- いずれも安定した結果を出すにはそれなりの「腕」が必要
という問題があった。
 
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そういうわけで、早く、安定した、技術が求められていた。
これを実現したのがATAC-seq(Assay for transposase-accessible chromatin using sequencing)
 
原理的なミソはタグ付きのトランスポゼースである。トランスポゼースはゲノムを切る活性がある酵素
 
大事なのは、このトランスポゼースが開いたゲノムにしかアクセスできないこと。ATAC-seqでは、このトランスポゼースにバーコードがついている。
 
つまり、トランスポゼースを処理してシーケンシングすれば開いたクロマチンのゲノム領域が分かるというわけ。以下の図も参考に。

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初めての報告はこの論文(Nature methods, 2013)。スタンフォードグリーンバーグとハワードチャン。
 
これ以降の論文は多すぎて逐一紹介していられない。ちなみにほとんどの論文でシーケンスしていて、qPCRしているものはほとんど見かけない(あるにはあるが)。ATAC-qPCRはあまり安定しないのかも?
 
また、ATACseqは当然のごとくシングルセルレベルでできるようになっている(Nature, 2015)。
 
さらに2018年末に10x genomicsがドロップseqと組み合わせたプラットフォームをリリースしていて、数1000細胞のオーダーでも解析できるようになっている。
 
ついでだと、凍らせたサンプルにも使えるプロトコルも出ている。まあ、細胞はゆっくり凍らせなさい、とかいうことなのだが。
 
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解析パイプラインについてはこちらなどを参照されるといいかも。ほとんどChIP-seqと同じパイプラインが使える。基本的な解析以降はみなさん論文ごとに自由にやっている印象。
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参考
- ChIP–seq and beyond: new and improved methodologies to detect and characterize protein–DNA interactions, 2012 
 

ヒストンの持つ驚きの機能_2

ヒストンの持つ驚きの機能_2
 
ヒストン細胞核の中でDNAを巻き付けてパッキングするタンパク質として知られる(以下の図)。
 
また、ヒストンはメチル化などの修飾を受けることで、遺伝子の発現を制御する大事な役割があることが分かっている。
 
このためヒストン研究の多くは、パッキング因子、遺伝子発現制御因子、としての機能を中心にして進められてきた
 
 
ところが最近になって、ヒストンにはこれらの機能だけではなく、意外に思えるような別の機能を持っていることが示されつつある。
 
例えば、ヒストンは銅を還元する活性があることを拙ブログでも以前紹介した。
 
今回さらなるヒストンの持つ驚きの機能、炎症時にヒストンが細胞外に放出されることで、ヒストンが細胞死を誘導することがある、という論文を紹介する。
 
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筆者らはヒストンの研究者ではなく、心疾患を研究しているグループのようだ。このため筆者らは動脈硬化に着目して研究を始めている。
 
動脈硬化といってもそんなになじみがないかもしれないが、なんと日本人の死因のおよそ1/4は動脈硬化である(1)。このことからも動脈硬化の発症メカニズムを知ることは重要だということが分かる。
 
特に、筆者らはモデルとして、動脈硬化の代表として知られるアテローム動脈硬化を扱っている。
 
アテローム動脈硬化プラークと呼ばれるものが血管の壁に作られることを特徴とする。
 
このアテローム動脈硬化プラークが破綻すると、そこで血小板が血栓を作って、血管が詰まり、心筋梗塞脳梗塞などを引き起こす。以下モデル図参照(参考2より引用)。
 
 
この中でも、アテローム動脈硬化プラークが破綻、がキーポイントである。このプラークの破綻を止めることができれば動脈硬化による血管の閉塞を回避できる可能性がある。
 
では、 プラークの破綻に重要なファクターは何であろうか?これまでの研究で、細胞死、特に血管の平滑筋の細胞死プラークの破綻に寄与することが知られていた
 
一方、免疫細胞も何やら大事らしいことが分かっていたので、筆者らは免疫細胞と平滑筋の細胞死との関係に着目した
 
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筆者らは免疫細胞の中でも、好中球に着目した。
 
なぜなら、アテローム動脈硬化モデルマウスにおいて、好中球が多いと平滑筋の細胞死が増加していることが分かったためである。
(このとき、マクロファージや血管内皮細胞の数および活性化状態にはあまり変化がないことも見ている。)
 
実際、好中球が多くなるような遺伝子改変マウスでは平滑筋の細胞死が増加し、プラークが安定化すること(逆も同様)、から好中球の活性化は血管平滑筋の細胞死を誘導することが示唆された。
 
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では、好中球はどのようにして血管平滑筋を細胞死させているのだろうか??
 
筆者らは好中球の持つ特殊な性質の一つ、好中球細胞外トラップに着目した。
 
好中球細胞外トラップ(NETs)とは、好中球が放出する自身の核酸、ヒストンと顆粒タンパク質などを成分とする網目状の構造物であり、これに細菌等を補足して感染を防御すると考えられている(下図参照)。
 
 
少し端折るが、筆者らは実際、血管平滑筋の細胞死にこの好中球細胞外トラップが必要であることを示している。
 
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では、好中球細胞外トラップはどのように細胞死を誘導するのだろうか?(ここからが本題??)
 
この疑問に迫るため、筆者らは好中球細胞外トラップに含まれることが知られるタンパク質を阻害した
このとき特に抗菌作用が知られる顆粒タンパク質群と、好中球細胞外トラップに多く含まれているヒストンに着目している。
 
この結果、驚くべきことに、顆粒タンパク質の阻害は細胞死に影響を与えない一方、ヒストンの阻害では平滑筋細胞の細胞死が抑制されることが分かった。
 
さらに、特にコアヒストンの一つであるヒストンH4が、特に細胞死への影響が強いことを見出している。
 
*ヒストンは普通核の中でDNAと巻き付いているものというのが"常識"なので、この発見は驚きである。
 
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では、ヒストンH4はどのように細胞死を誘導するのだろうか?
 
例えば、ヒストンH4が何らかのシグナル因子になっている可能性も考えられる。しかし、筆者らは観察によってヒストンH4が膜に突き刺さっている可能性を見出した。
 
ヒストンH4はプラス性の電荷を帯びていることが知られている(カチオン性)。一方、細胞膜はマイナス性の電荷を帯びていることが知られる(アニオン性)。
 
このため、筆者らは、ヒストンH4と細胞膜が静電相互作用により近接し、そのまま細胞膜を破っているのではないかと考えた。なんともびっくりである。
 
実際、プラス性を弱めたようなヒストンH4変異体では細胞死は減少し、プラス性を強めたヒストンH4変異体では細胞死が亢進していることを明らかにしている。
 
 
これは本当ならばインパクトの大きい仮説である。一方、インパクトが大きい分、検証もより丁寧に行う必要がある。
そこでさらに、筆者らはヒストンH4→細胞膜破壊の直接的な証拠に迫った。
 
筆者らは、細胞膜を模倣し人工的に作った脂質二重膜にヒストンH4を振りかける実験を行った。その結果、ヒストンH4を振りかけておくと、脂質二重膜に穴が開く様子が観察された。(以下本論文より引用、黒く見えるのが脂質二重膜に空いた穴)
 
 
すなわち(驚くべきことに)、ヒストンH4は、直接、脂質二重膜を破壊する機能があることが示唆された。
 
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以上のことから、好中球から放たれたヒストンH4が、血管平滑筋の細胞死を誘導していることが示唆された。
 
では、ヒストンH4を阻害すれば、動脈硬化になりにくくなるのだろうか?この点に関して、筆者らは、ヒストンH4を阻害するようなペプチドを投与すると、平滑筋の細胞死が減少すること、プラークが安定化がみられること、を示している。
 
すなわち、ヒストンH4は動脈硬化に対する治療標的の一つになりうることを示唆する。
 
 
結果は以上で、今回の研究で
- 好中球から放出されるヒストンH4が平滑筋細胞の細胞死を誘導すること
- ヒストンH4は細胞膜を破壊することができること
- ヒストンH4の阻害は動脈硬化の治療につながる可能性があること
が見出された。(以下がまとめ図、本論文より引用)
 

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この結果は、ヒストンの持つ意外な機能を明らかにしたという生物学的面白さに留まらず、動脈硬化の治療にも大きな一歩であると考えられる。
 
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ヒストンといえば修飾されて遺伝子発現制御、という印象が強いが、こんな働きもあるのは驚き。ヒストンに限らず、まさかそんな機能があるなんて、という因子はまだまだたくさんあるだろう。
 
この因子はこういう機能、とこれまでの概念に縛られていては新しい発見はできなのかもしれない。
これからも、まさか、と思うような遺伝子の機能が明らかになると面白い。
 
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参考
- Externalized histone H4 orchestrates chronic inflammation by inducing lytic cell death, Nature, 2019
Carlos Silvestre-Roig, Quinte Braster, …, Oliver Soehnlein