Bio-Station

Bio-Stationは日々進歩する生命科学に関する知見を、整理、発信する生物系ポータルサイト、を目指します。

最近の生命科学論文

同性のマウスから子供を作る_1

次世代を作るという行為は生物を生物たらしめるために極めて重要である。 多くの生物は性別を持ち、次世代を作る際に遺伝子を混ぜることで、 害となる遺伝子を除くなどの利点を得ている。 一方で、同性での生殖が許されないと、 生殖の機会が減少するため生…

猫も杓子も相分離 (Phase separation)

細胞内には膜を持たない細胞内小器官が存在する。(membrane less organelles) (ストレス顆粒とか、核小体とか) 近年、これらの形成機構として相分離(Phase separation)という概念が提唱されている。流行ですな。 相分離を起こすと、これらの細胞内構造物を構…

父親からのエピジェネティクス継承はほとんどない?

個体の多くの形質は、遺伝的なDNA情報によって説明されると考えられてきた。 しかし、生命科学研究の進歩によって、ヒストン修飾やDNA修飾など、 DNAの塩基配列変化を伴わない形質伝播が存在することが分かってきた。 (いわゆるエピジェネティックスというや…

新しいロドプシン

近年、光遺伝学(オプトジェネティクス)というものが開発され、神経科学を中心に強力な研究ツールになっている。 光遺伝学は、光に応答するイオンチャネルを神経細胞に発現させておくことで、 光をON/OFFすることで、好きな場所の神経を、好きな時に活動させ…

学習/記憶に重要なRNA修飾

mRNAは転写されたのちに様々な修飾を受けることが知られている。 例えば、5末端でのキャッピングや、3末端のテーリングはRNAの成熟に必須である。 近年でもシトシン5位のメチル化(5mC)や、擬ウリジン化などいくつかの新しいRNA修飾が報告されている。 さらに…

リン酸化しないリン酸化酵素もどきの機能

細胞内でのシグナルを伝達手段として、数多くの翻訳後修飾があげられる。 なかでも、リン酸化は細胞増殖や細胞生存などで必須の役割を果たすことが知られている。 * これらのリン酸化を行う酵素はキナーゼ(リン酸化酵素の総称)と呼ばれる。 これらキナーゼ…

ニューロンへのリプログラミングの道_4 (低分子化合物で)

これまで3回にわたって、 遺伝子導入によって線維芽細胞をニューロンに系譜転換する方法とそのメカニズムを紹介してきた。 今回は、遺伝子導入ではなく、低分子化合物でこのような系譜転換を行う例を紹介する。 ----- 遺伝子導入による系譜転換は、 - ウイル…

ニューロンへのリプログラミングの道_3 (Brn2, Ascl1, Myt1l)

これまで2回にわたって、Brn2,Ascl1,Myt1l (BAM因子)の過剰発現で線維芽細胞をニューロンに系譜転換できること、 そして、Ascl1とBrn2の働くメカニズムを紹介してきた。 今回はこのBAM因子の中で最も謎に包まれたMyt1lについて紹介する。 ----- Myt1lはmyeli…

ニューロンへのリプログラミングの道_2 (Brn2, Ascl1, Myt1l)

前回、Brn2,Ascl1,Myt1lの3つの遺伝子(頭文字をとってBAM因子)の強制発現だけで、 線維芽細胞をニューロンに系譜変換できることを紹介した。 ニューロンへのリプログラミングの道_1 (Brn2, Ascl1, Myt1l) - Jugem’s blog では、これらの3つの遺伝子はどのよ…

ニューロンへのリプログラミングの道_1 (Brn2, Ascl1, Myt1l)

私たちの体を構成する多くの分化細胞(皮膚細胞、神経細胞、血球、などなど)は、 発生の段階で、より未分化性の高い細胞から生み出される。 その様子はまるで球が坂を下り落ちるような状態にたとえられ、 坂を上るように細胞の状態が変化することはほとんどな…

ポリAテールはAだけじゃない!

DNAから転写された一般的なRNAは、キャッピングやスプライシングといった 様々な加工を受けたのちに成熟RNAとなり核外に輸送される。 特に、RNAの3末端側にAが付加されるポリAテーリングという修飾は、RNAの翻訳効率や安定性に関わるためとても重要である。 …

タコの神経基盤

タコは、5億年も前にヒトとは進化的に分離した種であるが、 無脊椎動物としては最も神経が発達していることや、 特徴的な足の吸盤、ぎょろっとした目、などからモデル動物として有用らしい。 ------ 今回筆者らは、特にその行動の多様性に着目し、 タコの神…

シングルセルMNase-seq

細胞の中で遺伝子の発現を制御するメカニズムとして、クロマチン*の状態が大切であることがよく分かっている。 すなわち、ある遺伝子の転写開始点付近がオープンであればその遺伝子は発現しやすく(ユークロマチン)、 クローズであれば遺伝子発現はしにくい(…

RNAを時計代わりに

近年、単一細胞ごとに遺伝子発現を記述するシングセルRNAseqが開発され、その威力を発揮している。 特に、発生の過程においては遺伝子発現のパターンから擬時間軸を推定するpseudotime解析が広く使われている。 ところが、このシングルセル解析は解析した時…

核内でRNAを制御する

Argonauto(AGO)はmiRNAによるサイレンシングの実行因子であるRISC complexの構成要素である。 従来AGOは細胞質で標的mRNAと相互作用すると考えられてきたが、近年核にもAGOが存在していることが分かってきた。 しかし、どのような細胞で核にAGOが存在するの…

ヒトでの骨幹細胞の発見

ヒトでの骨幹細胞の発見 私たちのまさに骨格となる骨は他の組織と同様に骨の幹細胞から生まれると考えられる。 このヒトにおける「骨の幹細胞」は、長らく存在こそ想定されてきたが、 その実体は未だつかまれていなかった。 今回の論文*では、ついにヒトでの…

若い血を飲むと再生能が落ちる??

若い血を飲むと再生能が落ちる?? トカゲは切った尻尾を再生させることができるが、 私たち人間は基本的に傷ついた組織を再生させることはできない。 ただし、肝臓や子供の皮膚など限られた再生能があることが知られている。 この再生能の研究で多く用いら…

アスピリンの日常的な服用は危険かも?

アスピリンの日常的な服用は危険かも? アスピリンは、古くから知られる鎮痛剤である。 ただ、アスピリンは鎮痛に効くのみではなく、 低用量で毎日服用すると心筋梗塞、脳卒中のみならず、がんや、アルツハイマー病までも予防する万能薬と考えられている。 (…

Eat meシグナルが大人の幹細胞の枯渇を防ぐ

Eat meシグナルが大人の幹細胞の枯渇を防ぐ! Autocrine Mfge8 Signaling Prevents Developmental Exhaustion of the Adult Neural Stem Cell Pool, Cell stem cell, 2018 Yi Zhou, Allison M.Bond,..., Guo-li Ming and Hong jun Song 生物の体において、不…

膜電位が運命をきめる!

膜電位が運命をきめる! Progenitor Hyperpolarization Regulates the Sequential Generation of Neuronal Subtypes in the Developing Neocortex, Cell, 2018 Ilaria Vitali, Sabine Fie` vre, Ludovic Telley, ..., Camilla Bellone, Debra L. Silver, Den…